中層下部:落水の小路
あれから把握できない数のマモノを倒しつつ螺旋通路を下り、最初の頃に比べて慣れもあり後半は一日十数キロ単位で下れるようになって約半月────
「じ、じめんだぁぁあ!」
僕は蟲の体液でドロッドロになりながら、両手を突き上げて中層へと辿り着いた喜びを噛み締めていた。
こんな幅が広くて安心できる地面なんていつぶりだろう……!長かった……!本当に長かったよぉ…………!
体はもうドロドロだし、射杭糸機も途中何度も詰まったけれど、それでも僕はこの中層に辿り着いたんだぁ!
でもおかげでこれからどんな環境とか状況でも冷静に落ち着いて対応したり、休息を撮ったり出来るようになったよ。うん。もう二度と来たくはないけど。
さて、とりあえずそんなこんなで苦労の末ようやく中層に着いたわけだけども……
「凄いなこれは。聞いてた話以上だ」
そう言う僕の目の前には左右にそこそこな広さの道があり、その真ん中には緩やかに水の流れる広い水路、そして辛うじて形の残っているドーム状の天井や壁から水が流れ込んでいる景色が広がっていた。
あんだけ殺してあんだけ叩き落として死体が積み重なってないかなぁって思ってたけれど、確かにこれだけ深い水路が下に流れてれば積み上がったりはしてないよね。
それに、昨日辺りからあの道穴で降りてる時にもマモノ見なくなってたし、やっぱり中層「下部」っていうのは雰囲気が変わるもんなんだろうな……
でもまぁとりあえず、体を洗ってサッパリして、今日はテントのベッドでガッツリ眠るぞー!
ーーーーーーーーー
さぁて、とりあえずスッキリしてグッスリできたし改めて色々とここに関して考えてみよう。
まず今僕が分かっている事だけど、ハクヨクちゃんからの情報によると、ここは「落水の小路」っていう中層の下部にある広大な迷路のような遺跡らしい。
何故出るのが下部かと言うと、あの道穴は中層へと続く一本道なだけあって中層の壁中を通っているらしく、途中で上部や中部に位置する出入口が発見されてないからだ。
そしてここには────
大型化したマモノが多数生息している……らしいんだよねぇ。
そんな危ない場所で爆睡してよく無事だったな僕。
さて、とりあえずそんな事は今はどうでもいいとして、この遺跡は中層が最も厄介で最も見所のある場所らしく、そこに出ることが本当の中層デビューだそうだ。
と言うわけで、これから暫く僕の目標はまずこの落水の小路からの脱出、そしてハクヨクちゃんに内緒って言われた中層中部の姿を拝む事!
そうと決まればここでのんびりしてる場合じゃ無いよね!
さてそれじゃあ────
「!?」
じ、地面が揺れてる?!なんかわかんないけれど嫌な予感がするし……とりあえずちょうどいい隙間があるし、収まるまでそこに隠れておこう。
そんな念の為と行ったその行動に、僕は心底感謝することになる事になった。
何故かというと……
ナニコレナニコレナニコレヤバイヤバイヤバイ。
僕が隠れて数秒がたった頃僕の目の前にはものすごい速度で目の前長くて黒くてどデカい何かが通り過ぎていた。
こ、これはやばい……あの水性のマモノとか多脚型のマモノみたいな、主級だと思ってたマモノが子供に見えて来るよ…………
一応あれここの主級だよね?あれが標準とか超怖いよ?
……とりあえず、次から地面揺れたら絶対になんとしても隠れよう。うん。まぁ少なくとも今は安全だろうし、今の内に進むとしよう。
こうして僕の中層攻略が幕を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます