崩れ遺跡:中層道穴

 崩れ遺跡のその南端、中層へ続く大穴ありけりー。

 と、言うわけで今回は中層デビューを果たすべく、中層に行く為の最もメジャーな経路である南端の道穴へと来ております。

 道の穴と書いて「どうけつ」と呼ぶに相応しく、底の見えない中層まで真っ逆さまな穴の側面に螺旋状の道がある大きな穴である。


 ちなみに他にルートがあったり、ほぼ安全な近道を知って居るのにわざわざこの道で行くのかと言うと……


「うっへぇ……噂通りだけど凄まじいなぁ」


 ガジガジガサガサと壁面を這い回っている凄い数の蟲、こいつらを倒し、捌き、時には躱しながら降りる事で中層でも通じる実力を身につける為である。

 ハクヨクちゃん曰く、中層のマモノは大型が少ない代わりに数が多く、時々特殊能力地味た力を持ってる為1度はこの道で多数を相手にする感覚を手にしておくべきらしい。


 でも実際、これを体験しておけば確かに今後どんな多数の敵が来てもなんとかなるような気がしてくるな……さてそれじゃあ。


「蟲避けの採古物もあるし、降りながら限界近くなるまで戦い続けてみましょうか!」


 そう意気込み、僕はこの大穴の階段へと足を踏み入れ────


 ーーーーーーーーーーーーーー


 まさか、丸一日かかってまだ入口が見えるくらいしか進めていないとは……


「ちょっと深すぎるというか……広すぎませんかねこの大穴」


 流石にきちんと射杭糸機が刺さりそうにないからきちんと降りてはいるんだけれど、おかげで凄く時間がかかってるんだよねぇ……

 帰り道は他のルートで行こう。

 さて。とりあえず丸一日戦って分かったことだけど、思ってたよりもマモノの種類が多かったな。


 最初ぱっと見た限りムカデのようなマモノばかりに見えたものの、実際入ると崩れ遺跡で相手にした主級の小さい版やトビキリ、見たことも無い奴等と種類が豊富だった。


 特にトビキリ、あいつ前相手にした時はそこまで脅威に感じなかったけど、他のマモノの間を縫って突然斬りかかって来るの本当に厄介なんだよ。

 まぁでも、ハクヨクちゃんが言った通り確かにこれは間違いなく多数との戦いを学ぶには最適なのは間違いなかったね。

 とはいえ……


「流石にこの状況じゃ寝れないわ」


 それどころか気も休まりませんわ。


 蟲という虫に似たマモノを総称する奴らを避ける蟲避けの採古物によって安全は確保されているものの、周りから蟲の蠢く音や気配等で、僕は全く休めていなかった。


 女の子になってから虫に少し抵抗が出来たような気がしなくも無い……って感じで済むレベルじゃないよなぁこれ。

 すっごい脳天気な奴じゃなきゃこんな環境で休めはしないだろ。

 でも危険な環境での休息の慣れって意味じゃいい訓練……なのかなぁ。


 そんな事を思いながらも、休まねば先には進めないという思いで僕は体を休めるのであった。

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