緑淵遺跡7

「長耳くん!一応聞いておきたいんだが、この緑淵遺跡を君はどれくらい知っているのかい?」


 緑淵遺跡について知ってる事?

 んー……だだっ広くて植物と水が多くて……後でっかい穴があるってことしか知らないなぁ。


「表情を見るに知ってるのは草と水と穴ってくらいで、この「遺跡の構造」を長耳くんは知らなさそうだね」


 角と爬虫類っぽい翼、そして尻尾が鱗で体全身が覆われたモフワ度0%のリーダーさんに尋ねられたものの……どことなーくドヤ顔で語る姿が絶妙にウザイ。

 単純にウザいというか、胡散臭くてウザイ感じ。

 でもまぁこの遺跡がどういう構造なのか知らないし、ここは大人しく聞いておくかぁ……


「ならばこの俺が無知な君に丁寧に説明してあげよう!この遺跡は────あー……博士!君に出番を作ってあげよう!」


「はいはい。どうせそんな事だろうと思ってたのだね。仕方ない、この我が丁寧に教えてあげるのだね」


 何だか張り切ってる博士ことこの茶色と黒のモフワ度60%の翼と黄色の嘴を持つ、チームの中では比較的まともなこのヒトの説明は分かりやすくて助かるんだよね。


「この緑淵遺跡は中央部に大きな穴がある。そしてその穴を囲む様に遺跡が構成されているのはわかるだろう?」


 うん。それは前回ここを探索した時に把握は出来てる。

 それで?


「そして実はその穴を中心に、下の方へ幾重も層が出来ているのだね。長耳が知ってるかは分からぬが、サルノコシカケというキノコみたいな感じだね」


 サルノコシカケ……あれか、木に生えてる段々になってるキノコ。

 って事はこの下にもこんな感じの場所が何重にもあるのか……


「だが1つ問題があってだね。ここはそんな変わった構造をしてるからか洞窟らしい通路は無くてだね、崩落して床が抜けてる場所以外下に行く道は見つかってないのだね」


「だからテメェは邪魔なんだよ。翼無しが」


 むっ。

 本当にこいつ、オオバネは一つ一つの言動が腹立つなぁ……

 の割にあの黒い翼はきちんと手入れされてるからモフワ度70%超は固いのが更に腹立たしい……!

 というか、翼があるヒトにしては珍しく嘴が無いタイプな割にその着こなすのが割と難しいかっこいい黒装束がまたピッタリなのがもっと腹立たしい!


「俺らだけなら飛んで行ける。分かったなら帰れ、翼無し」


「オオバネ、言い過ぎ」


「……ちっ」


 ハクヨクさん……いつもオオバネを止めてくれて助かるけれど、フードで顔隠れてるから一層何考えてるか分からないんだよなぁ……

 少なくともパッと見だけであの真っ白な、あの翼のモフワ度だけど80%以上は間違いないな。うん。


「さて、とりあえず大穴が見えてきたね。長耳くん、一応博士が言った通り、階層を移動する手段が無いと進むのはキツいけど、どうするかい?」


 大穴見えてきて話が本題に戻ったと思ったら、急に移動の話を降ってきた割に乗せる、運ぶ気はないってか?

 流石翼持ちの皆様だ事。

 だけど、空中を割と自由に移動することなら僕だって!


「幾つ」


「へ?」


「幾つ目まで、降りればいい?」


「え、えーっとそうだなぁ……15番目の地面を過ぎた所の層だよ。もし移動手段がないならお願いすれば誰かが────」


 幾つ目まで降りればいいか分かればもう大丈夫、先に行かせてもらうから。


 さて、それじゃあ話してる途中に横を失礼させて貰って、先に穴に飛び込ませてもらったし、14層目まで数えた所で────


 ガン!


 よし!上手い具合に14段目の地面に刺さった!

 後は余裕を持って15番目の次の層に着地できれば────

 よし!完璧だ!


 みたか翼あるやつ共め!翼がないから優れて無いわけじゃないんだぞばーか!


 急いで降りてきて、僕がピンピンしてるのをみて唖然とする博士、オオバネ、リーダーに向かって、僕はそう思うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る