緑淵遺跡6

「はぁー……本当に通じてた、びっくり」


「だね。きちんと感謝しないとだねー?」


「う、うるせぇなぁ。疑った俺が悪かったよ。ちっ」


「こらこら、皆長耳さんが困っているだろう?ともかくこんな道があるとは知らなかった。教えてくれてありがとう長耳さん」


「いえいえ」


 スペランツァーのヒト達を依頼通り、前に見つけたあの道で案内し終えたのは言いけれど……やっぱりキャラ濃ゆいなぁこのヒト達!


「さて、それじゃあ報酬の話だけれど────」


 あぁ、そういや報酬まだ決めてなかったなぁ……というかそもそもどうしてこうなったんだっけ……

 ちょっと思い出して見るかぁ。


 ーーーーーーーーーー


「ちょっと、話を聞かせて欲しくてな」


 そうスペランツァーのリーダーを名乗る角と翼のあるヒトに声をかけられ、僕には何故か拒否権は無かったようであまり行かない酒場へと強制的に連れていかれた。


「おかえりだねリーダー。そいつは誰だね?」


「新しい、仲間?」


「にしては弱そうだがな」


「こら、失礼だろうオオバネ。それに今回は一旦話を聞かせて欲しくて来てもらっただけだ」


 あ、本当に話を聞きたかっただけっぽい。

 なんだてっきり「俺らが中層に行ってる間勝手してたそうじゃねぇかあぁん?」的な奴かと思ってたのに。

 というか本当に中層チームスペランツァーの人だった……


「はいはい。それで?上層の探跡者如きに、俺らが何を聞くってんだよリーダー」


「そりゃあモチロン、歪みの通路についてだよ」


「「「!?」」」


 歪みの道?

 なんだそれ?ってうおぉ?!


「歪みの道?!おい嘘だろ!どこからどこまでのだ!言え!」


「オオバネ、そろそろ怒る」


「っ……!」


 びっくりしたぁ……あの真っ白い羽がある……女のヒト?が睨み聞かせてくれたおかげでオオバネって呼ばれてた鳥系のヒトが離してくれた。

 感謝しなきゃ。


「えーっと……長耳くんでいいのだね?ウチのバカが本当にゴメンだね。お詫びと言ってはなんなのだが、報酬の額を予定しておいた額の2倍でどうだね?」


「んなっ?!そ、そんなのリーダーが許すわけ────」


「許すしか無いだろう。だいたい、俺達もゼロって訳ではないがお前の翼差別は度が過ぎるぞ。それでどうだい?受けてはくれないだろうか?」


 オオバネと呼ばれたヒトをそう叱りながらも、すぐ様断られるなんて考えなさそうにそう言ってくるあたり、やっぱこの人も翼差別意識はあるんだろうなぁ。

 ちなみに翼差別ってのは昔からある、空を飛べる種族が持つ翼がない種族を見下している考え方だ。


 と、言うことは今はどうでもよく……


 そもそもどういう依頼内容かわかんないし、話を聞くってだけじゃなかったっけ?

 そしてこれは喋らないとダメな雰囲気とみた。


「えっと、話が見えない……」


「リーダー、また一方的」


「お主、またなんの説明も無しじゃったな?」


「おっと、そういやまだだったな。済まない、許してくれ。それじゃあ改めて、君はこの遺跡がどれだけ広いか、知ってるかい?」


 この遺跡?

 死ぬ程広いっていうのだけなら分かるけど……


「君もどうやら、ハクヨクと同じであんまり喋らないタイプみたいだが、表情で何考えてるか分かりやすくて助けるよ」


「む……喋らないだけ、喋れる」


「んじゃ喋ってくれ。って感じだ、似てるだろ?で、その様子を見る限り、バカ広いのは理解してるみたいだね」


「で、そのバカ広いこの遺跡を効率よく探索する為に必要なのがさっきも言った歪みの通路と言うやつでだね。これはこの遺跡のあちこちにある簡単に言えば近道ってやつだね」


「ちょっ、ハカセ!俺が説明したかったのに」


「お主に任せておったら話が逸れて終わらんじゃろ。まぁ具体的に言うと、北側遺跡の最北端の道に入ったら南側遺跡の最南端の道から出てきた……っと言う感じだね」


「……!」


 なるほど。

 だから崩れ遺跡の中央部付近から入ったはずなのに緑淵遺跡の最奥部に出てたのか。

 いやわかってはいないけど、そういう現象があるなら理解は出来なくても、なんでそうなったのかっていうのは分かった。


「んで、数ヶ月かかる道のりを数日でっていう君の話を聞いてね。もしかしたらと思ったんだ。依頼内容は単純、次俺達が探索する時に案内をしてくれるだけでいい。どうだい?」


 こっちとしてもまた緑淵遺跡辺りを探索したかったし、それくらいでいいならついでに受けてもいいかな?


「分かりました。この依頼受けさせて頂きます」


「本当かい?!ありがとう長耳くん!」


 ーーーーーーーーーー


 って感じで案内する事になったんだったっけ。


「どうする?お金でいいかい?」


 で、成功報酬はついた時迄に考えときますっていう話にしてたんだったな。

 うーんお金でもいいけれど……


「次の階層、中層までの道が報酬で、どう?」


「お前それは!?」


「いや、いい。長耳くんの見つけたルートは二ヶ月近くの時短になった、これに対する報酬が俺達のルートを教えるだけなら安いもんさ。それに……」


「弱ければ死ぬ」


「うむ、ハクヨクの言う通りだね。つまり我々にデメリットは無く、コストも実質ゼロというお互いにウィンウィンな報酬になるのだね」


「さて、一応俺達はその報酬でいいんだが、本当に長耳くんはこの報酬でいいのかい?」


 それは勿論。

 返済目的ではあるけれど道がどこに繋がるか分からないってわかった今、何よりも大事なのはこの遺跡の全体像に繋がる情報なのだから。だから返事はもちろん────


「それでお願い」


 こうして、僕は中層までの道を見つける手段を得ることが出来たのであった。

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