地上街5

「……よし、ではこの本にはこれだけの値をつけてやろう!」


「!?」


 はっ!えっ?!こっ、こんなにっ!?

 あの本1冊で今までで最高額の値段になったんだけど!


「なんだ?この額で不満かー?流石にこれ以上は出せんぞチミィ」


 そ、そんな事はない!ただその……


「値段は大丈夫、びっくりしただけ」


 デス!


 渡されたこの皮袋の重みと、中から聞こえるジャラジャラって音がこう、なんというか……罪な感じがする。


「さってー、それじゃあアタシさんはこの本を保管しなきゃなんないのでね。用がないなら帰った帰った〜♪」


 滴水さんのこのテンション凄いなぁ……ってえぇっ?!

 ちょっ、ちょちょっまったぁ!


「ん?どしたのー?」


 どしたのー?じゃないよ!何水に沈めてんの?!


「あぁこれ?粘体系のヒトって個体によって色々体の液体が持つ性能が違うんだけどさ、アタシさんの性質は保管と再生でね、こうしてボロボロなのはつけておくのさ」


 な、なるほど……はぁ、せっかく持ってきた本をいきなり体に漬けられて本当にびっくりした。

 スライム……粘体系のヒト達は身体の作りが違い過ぎてなかなか考えと行動にびっくりさせられる。


「そういやチミィ、この本はどこで見つけたんだい?」


 見つけた場所?


「緑淵遺跡」


「ふむ。君が探索に出たのは確か二ヶ月前程だね?緑淵はあの穴を一蹴するのに2,3ヶ月かかる程とてつもなく広いが、入口付近に落ちてたのかい?」


 やっぱそんだけ広いんだなあそこ……でも僕がそれを見つけたのは比較的奥の方だし……あれ?時間が合わない?


「チミィ……無口なのは美徳だが、最低限会話という物をだね。緑淵は広いが入りの方は探索し尽くされている。まさか……殺しで奪ったりはしてないだろうね?」


 ……今は、不思議現象で悩んでる暇はなさそうだ。ここはそうだな、正直に答えるか。


「拾ったのは奥の方。緑淵遺跡には新しく見つけたとこから入った」


「ほぅ、新しくかい?だがこの地の探索が始まって千年と少し、今更見つかるとは────」


「それなんだが滴水さん。ちょっとこいつを借りてもいいかい?」


「?!」


 い、一体いつから!?というか、お前は誰だ?!


「はっはっはっ!いやはやすまん。最近話題になってる探跡者がどんなものかと思ってな、軽くつけさせてもらった」


「はぁ……チミィ、入るのは構わんがせめて気配を消すのはやめたまえ。なんかの拍子にアタシさんが泥棒と判断したらどうするつもりなんだい?」


「滴水さんがそんなことする訳ないだろう?さて、自己紹介がまだだったな。俺はチームスペランツァー、その偵察係件リーダーだ」


 スペランツァー?

 ってあれか!あの昨日賑やかだった中層チームのリーダ!

 そんな人が僕に一体なんの用なんだ?


「ははっ、なんの用だって顔してんな。大丈夫、とって食ったりはしないさ。ただちょっと、話を聞かせて欲しくてな」

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