地上街4

 よ、よーし。帰って来れたぞぉー。


「いやぁ長かった」


 結局、緑淵遺跡を抜けても戻るのに2週間くらいかかってしまった。

 でも崩れ遺跡は最初潜った時に雰囲気が変わったって所まではマッピングしてたからね、脱出だけならお茶の子さいさいよ。


 まぁ、緑淵遺跡のマッピングは全く進まなかったけど。

 まっすぐ目的地に向かってたんだから仕方ないといえば仕方ないんだけどさ、それでももう少しくらいは埋まっても良さそうなもんだけどなぁ。

 どんだけ広いんだあそこ……


「お!長耳久しぶりだな!生きてたのか!」


 お、食料品店のおっちゃんだ。

 なんとか無事に帰ってこれたぁーよ。


「卵、山のように用意しといたからな、後で寄ってくれよ!」


 お!それは助かる!

 今回の儲けは少なそうだけど、前回の儲けの残りが結構あるし、それで全部買い占めさせていた抱きましょう。

 所で……


「あの人混みは……なに?」


「あぁあれかい?中層以降の探跡者のチームが昨日帰ってきたんだよ。おかげで人は多くても活気が無いこの街も珍しく賑わってんだ」


 なるほど。

 探跡者自体少ないから帰ってくるだけで軽く賑わいはしてたけど、帰ってきたのが中層以降の探跡者ならこの賑わいも納得だ。


 店長の店に向かう道中、門からはい出て来た僕には食料品店をやっているキツネのおっちゃんのみが現状を説明してくれた。

 いつもなら少しくらいは人に囲まれるのだが、それすらない程やはり中層以降の探跡者は人気なのです。

 何故かって?それは簡単な事。

 コラビスにおいて深い階層の遺跡は未踏の地、何があるか分からない上に、深く潜る長期の探索程マモノやケモノとの遭遇率が上がる為危険度も上がる。

 つまりは相当な実力者であり、それだけすごいのだ。

 ちなみに中層以降と言っているが、このコラビスは大きくわけて上層、中層、下層とあるものの、下層は最下層という訳ではない。

 それ即ちこのコラビスにはまだまだ下があるのだ。


「ちなみにそいつら、戻ってくるのは二年ぶりらしいぞ」


 まじか。中層でもそんなに時間かかるなんて……ほんと、恐ろしい限りだね。ここは。

 さて、それじゃあいつまでも立ち話してちゃなんだし……


「お!毎度!」


 とりあえず卵の予約って事でお金だけ渡して、店長の店に戦利品を卸に行くとしますか。


 ーーーーーーーーーー


「んで、戦利品はこの最初の方で拾った並程度の採古物達だけってか」


 うぐっ。


「まぁそこそこな儲けにはなるだろうが、前回持ってきた魔物よりも大安上がりになるのだけは理解しておいてくれよ?」


 はぁーい。


 まぁ案の定と言うべきか予想通りと言うべきか、今回の探索で目玉になるような採古物はなかったからね。店長の言葉には容赦がない。


 一応少しでも足しになればなぁって途中で見つけたあの本とか持ち帰ったんだけど……やっぱ足しにすらならないかぁ……


「ん?おい長耳、この本は?」


 噂をすればなんとやらァ。

 流石に店長でもこれを黙りで理解はしてくれないよねぇ。えっとえっと……


「見つけたやつ。採古物じゃない」


 よし、完璧だ。必要なことは伝えられたしね!


「ほぅ…………ふーむ……なるほど、コラビスに関する物か……それならばここよりも、神殿跡地の方に店を構えてる滴水の店に持っていけ。そこなら高く買ってくれる」


 え?店長が売るといい場所を教えてくれた?

 あの他では高値がつくものでも買い叩いて転売するようなあの店長が?


「……お前、今すっごい失礼な事考えただろう?」


 ぎくっ。


「はぁ……ったく……俺はこのコラビスが好きなんだ。金儲けの場としてだけじゃない、純粋にこの場所がな。そしてお前も、こういった物を持ってきたという事はこの場所を金儲け以外の目で見るようになったのだろう?」


「!」


「ならば話は別だ。俺達ディスモダルークの商人はお前達探跡者が楽しめるよう全力で助け、この遺跡の謎を解いてくれるよう支援を惜しまない」


 店長……


「ま、そういう事だ。とりあえず今日は休んで明日行ってみるといい」


 店長の熱い一面を知ってしまった……でも、うん。

 これには応えてやりたいな。よし!明日からも頑張るぞー!

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