緑淵遺跡4
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ。
街の遺跡を見つけた僕がその街を探索しようとしたら念願の宿敵である巨大草団子が現れた。
そしてあの時の借りを返してやろうと思って構えたら、目の前で丸呑み草にぱっくんとされてしまった!
何を言ってるか分からねぇと思うが、つまりは……
「お前……これで死ぬのかよ……」
たった数秒の間にあったとはいえ、割と衝撃的な一連の流れを前にしちゃうと無駄に構えてたりしてただけになんというか、拍子抜けしちゃうよなぁ……
それに、あの草団子必死に脱出しようとしているんだろう、丸呑み草が時々体当たりされてるのか揺れてるのが、なんというかまた悲しい。
多分あのヌルヌルは消化液と逃げにくくする機能を両立させてるんだろうし、逃げれなかったらあいつはこのまま消化されるんだろうなぁ。
ま、わざわざ助けて戦う必要は無いし、あれはこのまま放置しといてとりあえず街中の罠植物を処理させて貰おう。
とは言ったものの、この街がどれくらいの大きさなのか分からないし、今はちょうどいいオブジェもあるからとりあえずぐるっと一周してみる程度でね。
なんて軽く考えたのが失敗だった。
なんせ罠植物の数が多すぎて一周するのに半日かかってしまったのだった。
これだけ罠植物が繁茂してるとマモノやケモノの侵入を防ぐにはもってこいだけれど、足の踏み場が無いほどは流石に生えすぎでしょ。
その割に街の中には生えてなかったし、街の探索は案外簡単に出来そうだ。
とはいえ……
「流石にこれだけ植物が跋扈してると金目の物とか採古物とかはボロボロになってたりして期待できなさそうだ」
でもまぁ、少しくらいはこの上層遺跡について知る事が出来るかもしれないし、悪くはないかもね。
どうしてあんな大穴が空いたのかとか、少しは興味あるし。
ーーーーーーーーーー
おじゃましまーす……おぉ。
ひっっろい建物だなぁ。んで真ん中のあれは……なんかの像かな?
遠目から見てわかるくらい苔まみれ草まみれになってるせいで原型はわかんないけど、あんな場所にあるって事はきっとこの街の人々にとって大切な────
カランっ。
なんか蹴飛ばしちゃったってこれは……骨?
なんでこんな所に……って、は?も、もしかしてあちこちの椅子にあるちらちら見えてた白いのって……
「骨……だよねぇ……」
これは……なんかの巣にでも迷い込んだのかもしれないねぇ……一応、警戒はしながら探索することにしよう。
とはいえ、パッと見調べるにしてもあの像とその奥のちょっと大き目の机みたいなやつだけかな?
力索方にはこの廃墟内で生き物らしき存在は引っかかってないし、罠にだけ気をつけて調べてみるか。
さて、とりあえずそういう事で像を見てみたはいいものの……ナンダコレ?
毛玉?いや、顔があるな、それに横にぐるっとした角があるって事は……ヒツジのヒト?
僕が知ってるヒツジのヒトも毛がもこもこで丸まってる角あったし、ヒツジなのは間違いないんだろうけど……
まぁいいや、とりあえず次はこの机の中を……お!
なんか書いてありそうな本を見つけたぞー。えっと何何……うーむ、風化が激しくて読めたもんじゃないなぁ……あ、でもこのページは読めそう。
「黒…冠す……信の神……救…ではなく我……………き霧で食……巣くい、黒霧の従………て召……た。この都の全………身を消し……抗……。神は所詮、神なのだ」
……うん、少しは読めるかなって思ったけど、全然読めなかったな。
でも……この最後の一言「神は所詮、神なのだ」っていう一言は、この場が信仰の場所なら最も沿わない言葉なのに、とっても重い気がする。
儲けにはならないけれど、これは持って帰ろうかな。
パタンと閉じた本の音が虚しく響くホールの中、僕は目の前の像を眺めながら、そう思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます