緑淵遺跡

 さて、どうしたもんか。


 真下には毒々しい色の水、天井と壁には大口をあけて食いかかってくる植物と歩き回ってトゲトゲの葉っぱで刺してくる植物が居る。

 ヒカリゴケと光水のおかげでこんな明るくて緑豊かなのに、全く休めないし心休まらないとはこれ如何に。


 はぁー……どうしてこうなったんだっけなぁ……

 そうだ、あいつだ、あいつが悪いんだ。

 あんにゃろう、次は見つけたら絶対狩ってやる。

 その為にもあいつの姿を明確に思い出さないと。


 ぷらーんと射杭糸機の糸で天井からぶら下がりつつ、僕はそんなある意味不純な動機でどうしてこうなったかを思い出し始める。


 ーーーーーーーーーー


「よーし出れたー!」


 2日ぶり!だいたい2日ぶりの広い空間!

 立てないし、狭すぎて寝返りすらうてないし、そんな場所で過ごすのは本当にキツかった。


「きゅえ」


 あ、おチビってうわっ。なんか四角くなっとる。

 あれか、ポーチの中箱と圧縮箱で四角くなっちゃったのか。


「きゅいいぃ」


「ごめんごめん。ほら、おチビの大好物あげるから」


 圧縮箱からリュックを出して、そこから道具とか食べ物の劣化を防げる保存袋を出して、んでその中からおチビ用の保存袋に入ってるゆで卵を四角くいおチビにプレゼント。


「きゅあーー!きゅむっ」


 はぁ〜♪

 いつもは謎の大口をあけて一飲みの癖に、大好物だから両手でしっかりもってちびちび味わって食べてるのすっごい可愛いわぁ〜。

 さて。それじゃあおチビのご機嫌は取れたし、周りを再確認してみよう。


 パッと見は今までの崩れ遺跡となんにも変わらない……っていう訳もなく、道中植物が増えて来てたから分かってたけど、ここはものすごく植物に溢れているな。

 崩れ遺跡にもあったようなちょっとしたコケ、草じゃなくて、背の高い草、木は勿論、なんかよくわからんデカい植物とかが天井、壁、床、あらゆるとこから生えてる。

 そして極めつけはこれよ、やたら明るくて広い。

 植物が所狭しと生えてるから狭く感じるけど、天井がめっちゃ高いし、壁に見える植物も植物で奥が見えないから壁に感じるってだけだからね。

 そして明るさの原因は……まぁ、所々流れてる光水とこのヒカリゴケだね。こっちが光水のランプ出さなくてもいいくらいには明るいってレベルだ。


 とりあえずおチビははぐれるから絶対ウエストポーチとかから出さないようにしよう。


 さて、とりあえずこの植物密度と明るさ、これは間違いなく崩れ遺跡の南側、上層中域下層に広がる植物が多いのが特徴の緑淵遺跡で間違いないだろう。


 噂だと崩れ遺跡はこの緑淵遺跡の豊かさを元に発展した文明だって聞いたけど、こんな多様な植物を見るとそれも嘘じゃ無さそうだ。

 それじゃあ一応目印立てながら、植物が少ない場所、元の崩れ遺跡の方面を目指してー────


 ガサッ!


 ん?

 なんか、葉っぱのでっかい塊の中から目っぽい光が……マモノか?


「ググォォォォォォ!!」


 マモノだっ!ってえぇっ?!


「そのデカい植物自体がマモノなのぉぉぉ!?」


 ーーーーーーーーーー


 んで、なんとか逃げた先がここだったって話。

 思い出してもまだあの草の塊がマモノだなんて、初見じゃ絶対気付かないよ。うん。


 さて、それじゃああのマモノに追われて元きた道は分からなくなったし、あのマモノを倒す事をサブ目標にとりあえず崩れ遺跡まで脱出する事が当面の目的だね。

 そうと決まればここにいつまでもぶら下がってる訳にも行かないー……ねっ!


「ふっ!」


 よし、上手く行った。

 地面に足をついたらやばそうなら、反動つけて飛び出して、戻した射杭糸機を直ぐにまた天井に投げていけばいいのさ!

 とりあえず安全な場所まではこれで!

 ……なんか、アーアァーって叫びたい気分になるな、コレ。


 そんな謎の衝動を感じつつ、僕は新しいその移動方で着地しても良さそうな場所まで移動するのであった。

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