崩れ遺跡4
「ギギュアァァアァァ!!」
よし、今っ!
耳をつんざくようなマモノの悲鳴に思わず耳を伏せてしまいながらも、僕は一瞬の隙を見逃さず4分の3程刺さった街灯の光水で満たされた灯具部分を叩き割った。
そして反撃を喰らわないよう袖に仕込んでおいた鎖杭を壁に投げて打ち込み、その場から離脱する。
最初の1発で仕留められればそれが一番よかったんだけど、まぁそんな上手くいったら誰もマモノで死にやしないよね。
さて、光水ぶっかけたおかげで少なくとも頭のサイズくらいはわかる様になったけれど……
デカくない?
頭だけで普通に僕の体くらいのサイズはあるぞ、あれ。
さぁてどうするかなぁ……
とりあえず武器はまだある、無くなっても最悪尾斧と刃腕で戦えるしっ!?
「にゃーろー……」
まだ離脱して2、30秒も経ってないのにもう攻撃してきやがった。
今のぶっとい黒いのは足か?
空中で足を使った攻撃をするって事は多脚型だし……ならばこんな相手に有利な場所で戦ってやる必要はないですね。
バッグにある光水ランプの照らす外から、ゴシャッと顔の横の壁に穴を開けた脚と思われる物での攻撃をすんでのところで避けた僕は、そう考え鎖杭を抜いて飛び降りた。
そしてその鎖杭を引き戻した後そのまま真上へと投げ、今度は顔の横にあったマモノの脚へと鎖杭を巻き付かせる。
鎖杭は反しがあるからこうなれば外れない!
ならば後は落下速度にものを言わせて────
「グキュアァァァア!?」
脚をへし折ればいいのだ!
よし、光水見えてたから分かってたけど底までそんなに距離無くて助かった!
さて後は……
ズドンッ!
「ギチチチチチチ……クギュルァァァアアア!」
素の殴り合いでこいつを倒すだけだ。
最初に叩き割った街灯の光水に照らされ顕になった、頭のど真ん中に街灯が刺さり、右前脚がブランとなった10本脚の蜘蛛型のマモノを前にする。
そして改めて敵の姿を確認した僕は、腰の後ろから小型ながら鋭く折れないナイフを抜き取る。
さてさて。ここで新章、僕流マモノとの戦い方の基本シリーズが出るわけですが。
その1。
マモノを一撃で倒すなんて身体能力の高い種族のヒト出なければ不可能です。
なので力自体はそこまで強くない僕は、大型のマモノは傷を浅く多く付け、少しずつ弱らせて倒す事が基本的なマモノの倒し方になると考えていたんだけれども……
これ、本当にちまちまで削りきれるんだろうか?
このナイフも折れない堅鈦を真に、刃の部分は重鋁を使ったよく切れるし重い上物の奴なのになっ!
本当に倒せるのかと考えていた僕は、横に思い切り回避を取り、先程まで僕の居た位置に猛烈な勢いで突っ込んできたマモノを避ける。
うっひゃあー……
前脚折っといたお陰で攻撃の勢いそのままバランス崩してくれたけど、あの質量であの速度は本当におっかないな……
ん?バランスを崩した?
あんなに脚があるのに、たった一本折っただけで……?
探せ……何かある筈だ、あれがバランスを崩した要因が、それを見つけろ、それが打開策になるはずだ。
そこそこな広さのある、光水で下からうっすらと照らされた「巣」の中を、マモノの攻撃を避けながら走り回り、目を走らせ、手がかりになる物を探し、そして見つける。
それは先程このマモノがバランスを崩した場所で、長年の埃や石なんかを絡め取っていたせいか、地面と同じ色になっていたものの、間違いなくマモノが引っかかって切れた「糸」だった。
蜘蛛が糸に引っかかるなんて、なんだか変な話だけど……
「使える物は、使うしかない」
とはいえまずは糸が切れるかどうかなんだけどっ!
うん、無理だね。
表面に石とかついてるから刃が通りにくいってのもあるけど、それ以上に糸が硬い。
逃げながら切り付けた程度だけでも分かる硬さだったよ。
まぁあのマモノのバランスを崩すレベルって時点で最初から分かってたけど、切れないなら切れないで使い様はあるし、当初の作戦通り立ち回らせて頂きましょう。
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