崩れ遺跡3

 遺跡探索の基本そのにぃーの、つづきぃー。

 罠以外にも地形をきちんと把握するのは、マモノやケモノに襲われた際どう対応したらいいか判断出来るようにです。


 と、言うわけで現在いるこの地形を地面を砕く敵の攻撃を避けながら再確認すると、長さ不明、幅30m、高さは20mくらいの一直線の市街地道路でございます。

 つまるところ距離取りは不可、何処かやつらのこれない場所に逃げるのも不可でございます。

 あんなバケモン相手になんちゅー理不尽だ。

 幸いな事にあの猛スピードアタックはあいつの上にいない限りしてこないみたいだし、このまま同じ高さで戦い続けたらー……

 いずれか絶対崩落するよなぁ。

 崩落なんて崩れ遺跡じゃ日常茶飯事だし。


「殺すか」


 こんな場所、こんなご時世にこんな事を躊躇うのもあれだけど……生きる為だ、許せ。


 そう覚悟を僕が決めるが早いか、飛んできた大ぶりの一撃をジャンプしながら空中で体を捻り、紙一重で避ける。

 そしてそのまま、僕の種族の特徴である毛を硬化する事で先が二股に別れた、両刃斧のようになった尻尾を叩きつけ、そのケモノを真っ二つにする。

 するとケモノは目や口と同じ真っ黒な断面を見せながらふたつに別れて倒れると、ほわほわと小さな真っ白い光になって空に登りながら消えてゆく。


 ケモノは謎が多いって聞いてたけれど、真っ二つにしても血は流さないし、死んでもこうやって光になって消える。

 うむ、本当に謎だ。

 体を真っ二つにしても内蔵のひとつもない、真っ黒な場所があるだけっていう時点で、最早生き物ですらないしね。

 そしてケモノが身につけてた品々はその場に残ると。

 本当に残ると思ってなかったから躊躇なく真っ二つにしたけど、これ鎧とか採古物持ってる奴だとできるだけ傷つけ無いように倒したりとかしなきゃならんな。

 まぁ今回の奴は衣服以外になんも持ってなかったし、漁るものは無いか。

 せめて安らかに眠っておくれ。


 さて、それじゃあ急いで奥に進もう。

 家屋内に採古物があるかの探索は後回しだ。

 これだけ騒いだんだ、ここの主が動き出してもおかしくはない。


 何故主が居ると結論を出したのか、それは至って簡単だ。

 ここは長年埋もれていた街であり、更にケモノがいるならば地形上殲滅されているか大量に居るかの2つに1つ、なのに今の所見つかったケモノはさっきの一匹だ。

 ならばここにマモノの主が居て、ケモノは餌代わりに狩られていたと考えるのが妥当である。

 そう僕は考え、軽くケモノの遺した衣服に冥福を祈った後、気を引き締め直し先程より注意深く、そして急ぎ足でこのエリアの最奥を目指して走っていく。


 まぁ分かっちゃいた事だけど、奥に行けば行く程建物が崩れてるし、壁も建物の壁とかレンガじゃなくて岩肌になってる辺り、やっぱ主級の奴が居るんだろうなぁ……

 ま、もう逃げられないと踏んで逆にこっちから先手を打とうってしてる奴が考える事じゃないんだけどねっ!

 うっわぁ、思ってたよりも高いぞこれ。

 でも────


「このまま、落ちる!」


 目の前に広がる大穴に飛び込み、ヒュゴオオオっとすごい勢いで何十メートルも落下するのを感じつつ、尻尾ではなく途中でへし折って持ってきた街灯を下に向かって突き出す。

 そして────


「キュララララララァァアア!」


 穴の奥底より姿を表した巨大な大口と多数の瞳のあるマモノの頭へと、勢いそのままその鋭利な街灯の折れ口を突き刺してやったのであった。

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