第15話
所変わって王城、会議室。
ロイドはアルバート王に呼ばれて王城を訪れていた。そしてメイドに案内されて会議室に到着した所だった。
「ロイドよ、良く来てくれた。」
「国王様におかれましてはご健勝の様で大変喜ばしく思います。」
「よい、そのように固くなるな。普段のように話すことを許す。」
「わかったわい。」
この日はやっとロイドとアルバートの都合が合い。ジークに付いての話し合いをする事になっていた。
「してそなたの孫はどこにいるのだ?」
「連れてきていると思っているのかの?」
「暴風龍が来ていたのでな、これはもしやと思ったのだが?」
「冗談を言うでないわい。こんな魔窟にかわいい孫を連れて来れるか。」
アルバートとロイドは実は昔からの知り合いである。行商人をしていたロイドとハンターとして生活していたアルバートはロイドが出した護衛依頼で一緒に旅をすることになり、その旅の中でお互いに気が合いその後も交流を続けていた。
そんな中、前国王の体調が悪いと聞いたアルバートは仲の良かったロイドに薬の捜索を依頼しロイドは快諾。二人で薬を探し出して王都に帰還し、その貴重な薬を使って国王を助けた。
その報酬としてロイドは王都に店を持つことを許され、アルバートはその優秀さを買われ継承権第1位になった。(この時アルバートが王子であったと知ってロイドはひどく驚いたがアルバートが畏まられると困るという事で二人の時は気さくに話をしていいことになっている。)
その後、前国王は事故(階段から足を滑らせて落ちた。)により死亡。そして自身も命を狙われたアルバートが犯人を突き止めて国王になりここに至る。
「ケチなやつだな。少しくらい会わせてくれても問題にならんだろう?」
「孫の教育に極端に悪い奴のところになんぞ連れてくるか!!」
政治の中枢である王城には有象無象が蔓延っていて確実に教育に悪いだろう。ましてやその筆頭が目の前に居る男だ。
「まぁそれは良い、それであの話は本当なのだろうな?」
「鑑定をはじいたというのは本当じゃ。」
「ふぅ~む、となるとやはり俺直轄にしたほうが良くないか?」
「そう言って孫をもてあそぶつもりじゃろ!!そんな手に乗らんわ!!」
王はジークの事を諦めていなかった。その為に手はすでに打たれていた。
「残念だな、もう迎えに行かせたのだよ。」
「なんじゃと!!」
アルバートはロイドが目の前に居る状況を利用した。今なら無理矢理城に連れてきたとしてもロイドは動けず、王に呼ばれた少年と貴族に知らしめる事が出来る。そして王自身がこの少年には希少な能力が有り保護すると布告して、ジークを自分の庇護下に置く事を認めさせる気でいた。
「やりおったなアルバート!!この代償は利子付けて国が転覆するまで返してもらうからの!!」
「おぉ怖い怖い、でもいいのか?そんなことを言っていたらお前の孫はどうなるかな?」
「ぐぬぬぬぬ。」
このやり口に当然のように怒るロイド、しかしジークをすでに手に入れたと思っているアルバートは余裕の表情だ。だがそんな目論見もとあるスキルによって叩き潰されることになる。
《そんな遊び心を出すからこのような目に合うのです。反省しなさい。》
ズズゥーーーーン!!
二人の目の前に突然一枚の石板が現れた。そこには『警告!!人の権利を尊重せず自身の快楽のみを追求する者には天罰を下す。同じ思いをしてその罪を自覚すると良い。』と書かれていた。そして会議室に文官が一人慌てて飛び込んで来た。
「国王様大変です!!」
「どうした!!」
「国中に国王様の性癖が暴露されましたぁーーーーー!!」
「なぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
それは会議室に石板が現れたと同時刻、各地の広場や公園に同じように石板が現れ、『この国の国王は夜な夜な奥方に赤ちゃんプレイを強要しておむつを替えてもらっている。さらにはSMプレイにも興じておりその顔はだらしなく涎を垂らして喜んでいる。』と書かれていた。
そしてその石板の裏にはまるでその場面を直接切り取って張り付けたように見事な絵があり、だらしない顔の国王と鞭と蝋燭を持った仮面の女性が描かれていた。
もちろん人の密集地に突然現れた石板は多くの人が見ることになり、慌てて駆け付けた衛兵も国王の意外な一面に面喰い動けずにいた。
「すすすす、すぐにその石板を排除するのだ!!」
「わかりました!!各地にも通達します!!」
王城には通信用の魔道具が置いてあり、各地にある王国関連施設に置いてある通信魔道具と迅速に連絡が取れるようになっている。アルバートがこれからの事について考えながら会議室の石板が排除されるのを見守っていると、何とかしようとしていた部下が慌てた様子で報告に来た。
「排除できません!!動かそうにも重すぎて動かず、砕こうにも固すぎて砕ません!!各地からも同じような連絡が!!」
「なん・・・・・だと・・・・・orz」
国王の命令によりすぐに会議室や各地の石板を排除しようとするも比重がかなり重い石板で動かすことも出来ず魔法でもハンマーでもその石板は砕けなかった。なぜならその石板が表面は唯の石のように偽造しているが、中身は伝説のアダマンタイトで出来ており普通の人ではどうにかできる物ではなかったのだ。
どうにかして対処しようとしている所にさらに人が訪れる。その文官は申し訳なさそうにアルバート王に話しかけた。
「あのぅ王様申し訳ありませんが。」
「おぉ、迎えに出した使者ではないか。今忙しいがどうした?連れて来たのか?」
「えっと・・・・それが・・・・。」
その使者の話では馬車に乗ってガンバルー商会の邸宅に向かっていたのだが、いつの間にか王城の前に戻って来ていたという。何度も何度も向かおうとするがどうしても王城に戻ってきてしまい。どうすることも出来ずにまず戻って報告しようと思いここに来たと言う。
「何という事だ・・・・。これでは私の目論見が・・・・。」
「アルバート!!自業自得じゃこの馬鹿者が!!昔から思い出したかのように大きな騒動を起こしおってからに!!何回わしが周りに頭を下げて許してもらったと思っておるのじゃ!!」
アルバートの享楽主義な行動は昔からでロイドは時にはその尻ぬぐい、時には暴走を止める役割をしていた。しかし二人がそれぞれの道を進み始めた為に王の暴走を強く諫める者が居なくなり、さらにはとある規格外なスキルのせいで今回の騒動は国全土を巻き込んだ。
コンコンコンッ
大騒ぎの中会議室にさらなる訪問者が現れる。
「お忙しいところ失礼します。奥方様が参られました。」
「何!!シルヴィアが!!」
「あなた、これはいったいどういう事なのですか?」
「いやあのこれはだな・・・・。」
王妃シルヴィアは元々他国の王女だった。ハンターとして活躍していたアルバートに一目ぼれをするも身分の違いからその恋を諦めようとしたが諦めきれず、自身もハンターになりパーティを組んで一緒に旅に同行するというお転婆っぷりを見せた。
その旅の中で二人は仲を深め合い結婚するのだが、その際にハニートラップの回避やだらしないアルバートのフォロー等恥ずかしくもありがたい手助けの多くをシルヴィアにしてもらってアルバートは頭が上がらないのだ。
「この事は絶対に秘密にするから、どうしてもと言うので私は付き合ってあげたのですよ?それをこのような形で裏切るなんて。」
「裏切ったわけではない!!誰にも知られないようにしていたのになぜか情報が漏れていたのだ!!」
「それでも約束を違えたことに間違いはありません!!お仕置きです!!」
「はいっ!!」
のちにロイドは語った。その時の王妃の顔がまるでオーガロードの様であったと、そして手に鞭と蝋燭を持った王妃のその所業は教育上良くないので教えられないと。なお国王は喜んでいたそうです。
「何をやらかしてこのような事になったかは知りません。どうせろくでもない事をしようとしてこうなったのでしょうね。二度と同じことを繰り返さないように!!原因になった事についてはすぐに手を引きなさい、わかりましたね!!」
「「「「「「Yes!!Your Majesty!!」」」」」」
それはもう見事な敬礼だったそうだ。《マスターを守ってもらわなければいけないので記憶の処理は致しません。ですがこれ以上手を出したら本当に国に責任を取ってもらいますからね?》
この事件で国王の信用は失墜したかに見えたが、普段完璧に王様をやっているせいもあり。完全無欠な王様でも人間臭いところがあると国民は広い心で受け止め支持率は下がらなかったどころか上がったという。なお石板はその日の夜に突然姿を消し、さらに謎を呼び王都七不思議の1つ目として伝説を残しました。《私のせいではありませんよ?》
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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