第6話
「おいら大丈夫かなぁ?ばれたらひどいことされない?」
おいらの事がばれると件の令嬢に手を出されないか心配になったのでエリアさんに聞いてみた。爺ちゃん?手紙見て難しい顔してる。
「まぁそう簡単に知られるような事は無いでしょう。このお屋敷は外部に情報を漏らさないようになっています、それに向こうもこちらに手出しできません。なんせ王家御用達の商会ですからね。下手な貴族より力がありますよ。」
なるほど、寄親に世話されている令嬢なんて怖くないと。まぁなんかあったら自分で何とかしよう。ねっナビさん!!《頑張ってくださいね、応援しています。》応援じゃなくて手伝って!!
「ふむっ、事情は分かった。」
あっ爺ちゃん手紙読み終わったみたい。何が書いてあったんだろう?《知らないほうがいいですよ?》えっ!!何書いてあんのあの手紙に!!
「まぁ、あやつらが王都に来ないのは仕方ない。当時はわしも権力に負けて放逐という形を取らねば送り出してやれなんだしのぉ。今なら守ってやれるが面倒事は起こるか、これは仕方ない事じゃの。という事でジークや、今からおじいちゃんと屋敷を回ってご飯食べて一緒に風呂に入ろうかの(#^^#)」
爺ちゃん全然残念じゃなさそう!!めちゃくちゃ良い笑顔をしていらっしゃる!!いや風呂は一人で入るから!!ご飯も一人で食べれるよ!!やめて抱えないでエリアさん助けて!!爺ちゃんはえぇあ“あ”あ“あ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
《その後マスターは屋敷を隅々まで案内された後、ロイドさんにあーんされて夕食を取り、一緒に風呂に入り体の隅々まで洗われました。》
シクシクシクもうお嫁に行けない( ;∀;)《大丈夫です。あなたが行くのは婿ですし貰い手がいなければロイドさんが一生お世話してくれます。》そんな絶望しかない未来はいらないよ!!もう寝る!!《ハイハイお休みなさい。》
所変わって会長室、その中でロイドとエリアが話をしていた。
「会長今日はご機嫌ですね。」
「孫だけでも来てくれたんじゃ、うれしくないはずがなかろう。」
ロイドは令嬢とのごたごたの際に息子夫婦を守ってやれなかった事を悔しく思っていた。その悔しさをバネに商会を大きくして王家御用達商人になり権力を手に入れ、息子夫婦が王都でも安心して暮らせるようになったので呼び戻そうとしたのだ。
「手紙にはなんと書かれていたのですか?」
「ん?あぁこれじゃ読んでいいぞ。」
エリアが手紙を受け取り、中を確認すると延々とクリスによる息子自慢が書いてあった。その最後にサニアから、ジークには特別な才能がある。周りに隠しているようなので便宜を図ってほしい。そしてその才能をいつの日か気兼ねなく使えるようにしてやりたいと書かれていた。
「クリス様は相変わらずですね。それと特別な才能ですか・・・・・。どのような?」
「わからん。わしの鑑定もはじかれてしもうた。」
ロイドはこの国に3人しかいない上位鑑定持ちである。しかし、ジークのスキル<ナビ>は場所によってはエクストラスキルと呼ばれる最上位スキルでそのナビさんが鑑定を妨害した為、何も情報を得ることができなかったのだ。
「鑑定をはじく・・・、前代未聞ですね。」
「わしも驚いて声を抑えるので必死じゃったわ。さすがわしの孫!!」
「あっそこは爺馬鹿なんですね。」ボソッ
「何か言ったか?」「言ってません。」
今現在鑑定をはじく能力は確認されていない。つまり悪事を働く貴族に知られると、召し抱えると理由を付け実験体にされる可能性が高いとロイドは考えていた。事実隠れて自分の軍隊を作り国家転覆をはかっていた勢力がかつてサニアの起こした事件によって多数潰れている。
「どうされます?」
「大事な孫じゃぞ?知られるわけにはいかん。昔と違って今は力もある。絶対に守ってやるわい。」
「国王様には?」
「一応釘を刺す為に、伝えておこうかの?今のわしらを敵に回せばどうなるかは分かっておるじゃろ。馬鹿なことを考える貴族を抑えて貰おうかの。まぁもしちょっかいを掛けられても問題はないが。」
国王御用達にまでなったガンバルー商会はこの国だけでなく他国にまでそのネットワークを広げており、貴金属や魔道具、生活に根差した商品等を広く扱いそのシェアは6割を超える。さらには貧困層への援助も行っておりその人気は絶大で、会員数も全て合わせると10万人に上る。その会長のロイドがゴーサインを出せば一月で国を亡ぼせるほどの戦力が集まると言われている。
「末恐ろしいものです。」
「あの悔しさは忘れられん。今後同じ過ちを犯さぬように国相手でも負けないようにしただけじゃよ。まぁふざけたことを国がしなければ使う気はないので安心するのじゃ。近々直接説明に伺うと伝えておきなさい。」
「ではそのように。」
エリアは王直属の密偵である。シェア6割という国を揺るがす力を持ってしまった商会に監視として潜入している。しかし鑑定によりその所属がばれてしまい姿を消そうとしたがその優秀な能力を買われそのままロイドのメイド兼秘書として働いている。
エリアが出て行った後、ロイドは一人晩酌をしながら息子をかばって亡くなった妻の事を思い出していた。
かつての事件でサニアによって娼館から助け出されたクリス。今まで事件性も何もなかった娼館が実は違法な手段で人員を確保していた事は大きな衝撃となった。しかしそれを証言できるのは内部事情を聴いていたクリスしかいなかった。
その娼館は複数の貴族家が合同で管理していた。つまりかかわった貴族家全てが違法な手段に手を出しており、それが国に知られれば家の取り潰しと財産没収は必然。その為、唯一の証言者であるクリスを亡き者にしようと暗殺者が送り込まれた。
当時のガンバルー商会はまだ規模も小さく、屋敷も今の様に防備が完全ではなかった。その日、ロイドとサニアはクリスを助け出した状況を衛兵に説明する為に詰所に出向いていた。家にいたのは妻のマリアと傷心して療養しているクリス、そして雇った護衛だけであった。
暗殺者は護衛に成りすまして屋敷に侵入し、クリスを確実に殺害するために首を斬り落とそうとした。妙な胸騒ぎを覚えたサニアがロイドを連れて急いで戻ってみると、床に血まみれで倒れ込んでいる護衛とクリスをかばって刺されているマリア。再度クリスを殺そうとしている暗殺者が目に飛び込んで来た。
サニアは躊躇することなく飛び込みナイフを持った暗殺者を制圧。ロイドは衛兵と治癒魔法使いを呼んだがマリアの傷は深く命は助からなかった。
今際の際にマリアは「私はあなたと結婚出来て幸せでした。クリスの事を頼みます。」とロイドに伝え息を引き取った。
すぐに衛兵が駆け付け捕らえた暗殺者を尋問して依頼主を特定しようとしたが、その前に牢獄の中で暗殺者が殺され依頼人の情報を得る事が出来なかった。だがその証拠隠滅の手際とクリスを狙った事により誰が手を引いているのか明白であった。
しかし衛兵は証拠不十分として調査を中止。これには暗殺者を手引きした貴族家から圧力が掛かっていて衛兵隊だけで対処するのは不可能であった。それに納得のできなかったサニアとロイドは伝手を使って情報収集を始めた。
そして十分な証拠が集まった所で都合よく例の令嬢達が騒ぎ出しクリスをまた連れて行こうとした為、切れたサニアが殴り込みを行い。関わっていた貴族家や裏でその貴族家達を牛耳り、国を乗っ取ろうとしていた宰相家の罪の証拠と告発文を残して立ち去ったのが例の事件だった。
かつての悔しさや無力さを酒と一緒に飲み干し、ロイドは亡き妻に誓う。
「今度こそ守りきってみせる。見守っていてくれマリアや。」
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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♥️頂きました、
ありがとうございます🎵
★も頂きました!!ジェルミさんありがとうございます🎵
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