第36話話すよ
「ねえ、最近ニュースで話題になってた謎の意識不明者が増えてる事件って知ってるでしょ」
いきなりそんなことを言い出した私の発言に若干戸惑いつつも、目の前の彼女は、うんと答えてくれる。
「それがどうしたの?」
訝しむ眼差しを向けてくる彼女に、私は続けて自分の身に起こったことを話す。
「実は私もさ、そうだったの」
「そう?」
「だからその、意識不明になっちゃったの。一瞬だけ」
「え?」
一瞬だけ面喰らったような顔をする彼女だが、すぐに元の表情に戻すと。
「でも、すぐに起きれたならよかったじゃん。今の話が仁美が不機嫌な理由と何か関係あるの?」
問題なさそうに喋る彼女だが、もしかして記憶がなくなることはまだニュースになってないのかな? いや、そんなはずはない。多分彼女が目を通してないだけだ。だから私は、目の前の彼女になぜ意識不明になってしまうのか。どうしてそんなことになってしまうのか。自分の身に起こったことを全て話した。
話し終えると、彼女は声を出さなかった。私になんて声をかければいいのか迷っているのか、かける言葉が見つからないのか知らないが、なんだか物凄く深刻な面持ちをしている。
それからまた少し何かを考えてから。
「じゃあ、今から出かけようよ! あずさとの思い出の場所をめぐれば、もしかしたら仁美の記憶も戻るかもしれないじゃん!」
そんなポジティブな発言をすると、私の手を掴んで無理やり玄関から引っ張り出そうとしてきた。
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