第35話真実

 ピンポーンと家のインターホンが静寂に包まれた家の中に響き渡り、私は目をさます。一体こんな時間に誰だろう。まあどうでもいいや。私は居留守を使い、影を潜めるようにしてもう一度瞼を閉じるが。

「ピンポーン」

 諦めの悪い客なのか、もう一度インターホンを鳴らしてきた。もしかして宅配かな? だったら出ないのも悪いか……。そう思い、カメラモニターからインターホンを押してくる人影を見てみる。するとそこに写っていたのは、頭の悪そうな見た目をした、昨日昼休みに私の前の席に座ってきた女の子がそこにはいた、

 なんで? 今日は修学旅行でしょ。どうしてここにいるの? いろいろとわけがわからず頭がこんがらがっていると、彼女はもう一度インターホンを鳴らした。とてもしつこい。帰る気はなさそうだ。 

 私は緊張とだるさを感じながらも、ガチャリとドアを開ける。

「あ、仁美!」

 心配そうな視線を向けてくる彼女から目を逸らすと、俯いたまま。

「えーと、何か用?」

 冷たい態度で対応する。すると心配そうな視線を向けてくる彼女は、膝上まである白いスカートをふわりとヒラヒラさせながら、ずいっと玄関に入ってくる。

「ねえ、どうして今日休んだの?」 

 そんな質問をされ、私は言葉が詰まる。そもそもどうしてそんなことをこの人に話さないといけないんだろう。別にどうだっていいじゃん。ほっといてよ。そう思い、なんとか家から追い出そうとする。

「その、あんまり体調が良くないから……」

 だからもう帰ってというニュアンスを含めていうと、目の前の彼女は私にそっけない態度を取られたことを心底驚いたような表情をする。

「仁美機嫌悪いの? もしかしてあずさ、何か気に触ること言っちゃった?」

 不安そうに聞いてくる梓と名乗る少女に、私はなんと返せばいいのかわからなくなる。別にこのまま本当のことを言ってしまっても構わない。でもいきなり、記憶がなくなったからあなたのことを忘れましたなんて言ったら、それこそ変に思われるんじゃ。普通こんなこと話しても信じてもらえるわけないし……。

 私が黙ったまま俯いていると、彼女は距離を詰めて私を見つめてきた。その視線を感じると、なんだか途端にものすごく申し訳ない気持ちになってくる。今日は修学旅行なのにも関わらず、その大事なイベントを休んでまでここにきているってことはきっと彼女は記憶を失う前の私とすごく仲良しだったんだろう。

 多分私が皮を被らせてもらった少女に違いない。だったら、隠さずにしっかりと真実を教えるのが筋なのだろう。緊張が入り混じる空間の中、私はそっと口を開く。



















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