第34話親子
部屋から出た僕は、気怠げな体をなんとか引っ張って足を前に進める。とん、とん、とゆっくり一歩ずつ前に進んでいくと、不意に青空の光が窓から差し込んでくるので僕は目を細め、真っ青な空と、眼下に移る東京の街並みを眺める。
本当に戻ってきたんだな。まああっちの世界には大して長いこといたわけじゃないから、そこまで違和感があるわけじゃないけど。それでも、あの幻想的な世界で起こったことは、きっと今後一生忘れることはないだろう。
なんてことを考えていると、サッと僕の横を二人の親子が通り過ぎた。僕はその瞬間、バッと思いっきり後ろを振り向き、彼女たちの後ろ姿を確認する。仲よさそうに談笑しながら手を繋いで歩いていく二人の姿。
一瞬しか顔を見ることはできなかったけど、僕にははっきりと認識することができた。あの夢の中で出会った、仲の悪かった二人の親子を。ふっと笑みを携えると、僕も彼女たちのように前に進もうと思い、急いで今も待っているであろう七瀬さんの元へ歩いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます