第34話親子

 部屋から出た僕は、気怠げな体をなんとか引っ張って足を前に進める。とん、とん、とゆっくり一歩ずつ前に進んでいくと、不意に青空の光が窓から差し込んでくるので僕は目を細め、真っ青な空と、眼下に移る東京の街並みを眺める。

 本当に戻ってきたんだな。まああっちの世界には大して長いこといたわけじゃないから、そこまで違和感があるわけじゃないけど。それでも、あの幻想的な世界で起こったことは、きっと今後一生忘れることはないだろう。

 なんてことを考えていると、サッと僕の横を二人の親子が通り過ぎた。僕はその瞬間、バッと思いっきり後ろを振り向き、彼女たちの後ろ姿を確認する。仲よさそうに談笑しながら手を繋いで歩いていく二人の姿。

 一瞬しか顔を見ることはできなかったけど、僕にははっきりと認識することができた。あの夢の中で出会った、仲の悪かった二人の親子を。ふっと笑みを携えると、僕も彼女たちのように前に進もうと思い、急いで今も待っているであろう七瀬さんの元へ歩いて行った。

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