第27話世界からの脱出

「そもそもの話、ここから出る方法なんてないんだからそんなこと考えても無意味じゃない?」

 はぁーっと深くため息をつく峻輝。確かにここから出られなければ、いくら現実世界のことを考えたって無意味だ。でも、私にはその無意味なことを意味あることにできるかもしれない方法を思いついている。

「峻輝」

 いきなり名前を呼び、少しだけ間を空けてから、真剣な眼差しで峻輝の瞳を見つめ、質問する。

「もし、この世界から出られるってなったら、峻輝は出たいと思う?」

 突然の質問に、峻輝は出す言葉を悩んでいるのか悩ましげな顔で答える。

「えーっと……。まあ、出られるなら……」

 はっきりしない言い方だけど、私はその答えを聞いてニコッと笑みを作る。その様子がおかしく思えたのか、峻輝は訝しむ眼を私に向けてくる。

「七瀬さんはここから出られる方法がわかるの?」

 ジトーッと鋭い目付きで見てくる峻輝に、私は自分の考えていることを話す。

「この世界ってさ、由貴ちゃんが作り出した世界だと思うんだよね」

「由貴ちゃんが作り出した?」

「うん。あの子はここが絵本の中の世界って言ってたけど、私はあの子が作り出した世界だから、あの子が好きだった絵本の中みたいな世界になってると思うんだ。

 それに、由貴ちゃんと香澄さんが喧嘩してから露骨に空が暗くなった気がしない?」

 言うと、峻輝は確かにと呟く。

「だからさ」

 私は両手の人差し指を立てて。

「由貴ちゃんと香澄さんが仲直りすれば、この世界は崩壊すると思うんだ」

 立てた両手の人差し指を、コツンとくっつける。私の言い分に峻輝も納得したようで、左手をパーの形にして、その上に右手のゲンコツをポンと乗せて、なるほどと言った。

「確かに色々と納得できたよ。なんだか七瀬さん、記憶をなくしてから頭良くなった?」

 その言い方がなんだかバカにしてるような気がして、私はムッとする。

「それってどう言うこと? 前までの私はバカみたいだったってこと?」

「そ、そう言うわけじゃないよ。ただ、なんだか少しだけ賢く見えると言うか……」

「やっぱり前の私がバカみたいに見えてたってことじゃん!」

 ギャーギャーとうるさく騒ぎ立ててみると、峻輝は楽しそうに笑ってくれた。ああ、また話が脱線しちゃったとか、そんなことを思いつつも、いつまでも、この瞬間が途切れないでほしいなと思ってしまった。























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