第22話女性

 変な犬に会ってから数十分ほど経過して、ようやくお城の全面が見えるところまでたどり着くことができた。その瞬間。

「すご……」

 思わずそう声を漏らしてしまう。お城は全長何十メートルもありそうなほど大きく、そんなお城をさらに大きな湖が囲っているのだ。湖の中心にあるお城には橋が架けられており、その橋もまたものすごい大きさで、改めてここが現実世界じゃないことを実感させられる。お城の大きさに圧倒させられていると、峻輝は別の方に顔を向け、その方向をジッと見つめている。一体何をみているんだろうと気になった私は、峻輝が視線を向けている先に顔を向ける。

 目線の先にいたのは若い女性の姿だった。もの哀しげで、哀愁を漂わせた謎の女性が、家の窓からお城を眺めているのだ。なんだあの人? ここで何してるんだ?

 そう思いながらも、お城に向かおうとする。私がお城に向かって足を進めると、峻輝は「待って」と声をかけてきた。いきなり呼び止められた私は、顔だけ峻輝の方に向ける。

「どうしたの?」

「その、お城に行くのは一旦後回しにしない?」

 いきなりそんなことを言われ、頭に疑問符を浮かべる。

「どうして?」

「いや、特に理由みたいなものはないんだけどさ。なんというか、あそこにいる女性がなんか気になるんだよ……」

 峻輝の言っていることはわからなくもない。確かに最初目に見えた時、私もあの人のことが気になった。あんなに悲しそうな顔をしている綺麗な女性を見るのは初めてかも知れないと思うほど、悲しそうな顔を浮かべていた。

 別にお城には急いで行く必要もないし、私は峻輝の提案に賛成する。

「わかったよ。じゃああの女性がいる家に行こっか」

 そうして進めていた足を峻輝の隣に戻すと、一緒に女性がいる家へと赴く。女性がいる家の前に着くと、私たちは一旦立ち止まる。

「こういう時、ピンポンとか押したほうがいいのかな?」

 素朴な疑問を峻輝に投げかける。

「どうだろ? そもそもあの人が僕らと同じ状況なら、この家はあの人のものじゃないよね?」

「まあそうだね」

「だったら押さなくてもいいんじゃない? あの人も勝手にこの家にいるわけになるんだし」

「そうなのかな……? まあそうだね」

 あまり深く考えるのはよそう。それに、もしそのことで何か文句を言われたら峻輝のせいにすればいいし。そんなゲスいことを考えながら、私は家のドアを開ける。

「お邪魔しまーす」

 小声でそう言いながら、私たちは勝手に家の中にお邪魔する。内装は最初私たちがいた家とほとんど一緒だ。外見は全く違うのに、変なの……。階段の位置とかも一緒だし、一体この世界はなんなんだ? 尽きることのないその疑問を頭の中に思い浮かべると、私はそろりそろりと階段を登り始める。

 上の階に着くと、私は女性がいるであろう部屋のドアノブを触ると、ゆっくり捻り中に入る。中に入ると、先ほどと同じ窓の前で、女性がお城の方を見ながら佇んでいた。そんな女性に私たちは近づくと、後ろからゆっくりと。

「すいません」

 声を掛ける。声をかけられた女性は、肩をビクッと震わせて、ゆっくりと私たちの方に体を向けてきた。若干幼い顔立ち。綺麗というよりも、可愛い系な顔をしている。

「えっと……え?」

 いきなり部屋に不審者が二人もいたせいか、女性はかなり混乱しているっぽい。そりゃそうだ。いきなり部屋に知らない人が二人もいたら私だって混乱する。なんとか言い訳をしないと。

「あの、私たちは別に不審者とかではなくてですね。その、なんといいますか……」

 うまい言葉が見つからなかった。だって私たちって、側から見たら完全に不審者だ。どうしよう。困ったな……。よし!

「峻輝。代わりに説明して」

 峻輝に全部ぶん投げた。

「え?」 

 私に説明を投げられた峻輝は、それでも文句を言わずに自分たちの説明をし始めた。

「あの、僕たちはその、最近この世界に来てしまって……」

 峻輝がそう言い始めると、女性は理解したように頷いて。

「つまり君達は、私にこの世界のこととかを聞きに来たってこと?」

 そう聞いてきたので、峻輝は頷くと。

「その、お姉さんは何か知っていますか?」

 そう尋ねる。

 
























 

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