三日目

第13話知らない人たち

 目が覚めて、ここが現実の世界だと認識する。

 やっぱ覚えてるか……。今しがた見ていた夢のようなものは私の頭から離れることなく、それどころか強く鮮明に記憶されている。

 こうも毎夜毎夜、悪夢のようなものを見させられると参ってしまう。どんよりと嫌な気持ちでスタートを切り、私は布団から起き上がる。そんな憂鬱な気分を無理やり切り替えるため、頬を強く叩いて活を入れる。

 よし! 今日も頑張ろう。無理やり上げたテンションのまま、私は下の階に行く。

 そこでいつもならお父さんと朝の挨拶を交わすのだが、今日はそのお父さんの姿が見当たらない。どうしたんだろう。そんなことを思っていると、ピロンと携帯に通知音がなる。その送り主はお父さんで。

「仁美、起きたか? 遅刻しても学校には行くように」

 なんてメッセージが送られてきた。遅刻? 私はよ〜く目を凝らし、携帯に書かれている時間を二度見する。九時三十八分。うん? あれ? いやいやいや……。

「ええーーーーー!!!」

 普通に遅刻してるじゃん! 何やってるの私。あーもう! これも全部、あの変な夢のせいだ。ものすごい憤りを感じながらも、私は急いで学校へ向かう準備をする。全ての支度を雑に済ませた私は、ものすごいスピードでママチャリを漕ぎ、はぁはぁと息が上がりながらも学校へ到着する。到着して自転車を駐輪場に停めると、猛ダッシュで自分の教室へと向かい。

「すいません。遅れました!」

 授業中の教室の扉を思いっきり開け、勢いよく謝罪する。すると静かだった教室はドッと笑い声に包まれる。

「仁美何してんだよー!」

「おそーい」

「七瀬さん。早いとこ席に着きなさい」

 教師や担任に笑いながらそんなことを言われるが、私はその場から数秒間動くことができなかった。だって私の通っている学校のクラスメイトの顔が、ほとんど知らない人になっていたのだから。

 え? 何でこんなに知らない人ばかりなの? 焦った私は、教室に掛かっている二年E組の札を何度も見直す。うん。ここはちゃんと私の教室だ。別のクラスに間違えて入ったとか、そんなことは一切ない。その証拠に、梓が面白そうに笑ってる。

 そこで、昨日の夢の中で香澄さんが発していた発言を思い出す。

 香澄さんは、あの世界に来ると日を追うごとにだんだんと記憶がなくなっていくと言っていた。そして最後、あの世界にいる、私で言うお母さん以外の人の記憶をなくしてしまうと。あの時は深く考えなかったが、まさかこんなことになるとは……。

 記憶がなくなると言っても、なんだかんだいってなくならないか、少しだけ思い出がなくなるとか、その程度だと考えていた。でも、これほど明確に、誰が誰なのかわかんなくなるなんて……。パッともう一度教室を見渡すが、本当に梓以外の人の記憶がない。顔も、名前すらも……。

 呆気にとられてその場で立ち尽くしていると。

「七瀬さん。何をしているの? 早く席に座りなさい」

 教卓の前に立っている先生と思わしき女性から、席に座るよう催促される。私は混乱しながらも、言われたまま自分の席に座る。














 

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