第26話 練習の成果(1)
──皆でお礼周りをして、楽しくパンケーキ……ことパーンケーキを食べたのが
パンケーキを口いっぱいに頬張る王女様に、「アンジェもスミレも細すぎるからもっと食べろ!」と王女様と私のプレートに自分の分のパンケーキを足すルー様とそれをとても暖かい目で見守るダヴィッドさん。
……この世界に来てから私は息抜きしかしていないと思うぐらい、毎日が楽しい。
レイは元気にしているだろうか。
忘れられててもいいから無事に帰ってきて欲しい。
「おはようスミレ!今日も一日頑張るわよ!!」
さて、本日も魔法の練習をしていく。
今の状態では患者さんを練習台にする訳にはいかないので、ソフィアさんやたまに顔を出すマーシュ先生の気になるところに治癒魔法をかけるといった感じだ。
研修という形にしているが、流石にいつまでも練習させてもらうのは申し訳ないので早く他者への治癒魔法を使いこなしていきたいところではあるのだが……。
「おはようスミレちゃん。今日も精が出てるねぇ」
「おはようございますアンナさん。未だに練習中ですが……」
「もしスミレちゃんがいいなら、私を練習台にしてくれてもいいのよ」
おほほほ〜と優しく笑うこの人は近くのパン屋さんを営業するアンナさん、御年90歳。アシュク診療所の常連さんで開院日は常に朝イチから腰に治癒魔法をかけに来る。
「……スミレ、アンナさんに治癒魔法かけてみる?」
ソフィアさんからの提案。
「え、いいんですか?」
「……けど、いつもよりも込める魔力は少なめで調節してみて」
耳元で囁くように話すソフィアさん。
彼女が小声で言うには訳がある。
最近練習していて判明した事実。
……私の使う
気がついたのはマーシュ先生で、他者にかけてもらったときよりも異様に身体が軽いとのことで詳しく調べることになった。
原因は不明で、詠唱時に魔力を込めすぎてしまうことを最初は疑ったがそれだけでここまで効果が変わったりすることはないらしく、やはり異世界から召喚された巫女という点が大きいかもしれないとのことだった。
現在はマーシュ先生が独自に調査したのみであるので、後日王宮魔術師と第3騎士団も協力の元詳細な精査を行うとのことだった。
第3騎士団には顔見知りもいないし、不安ではあったが王宮魔術師ってダヴィッドさんの事だと思うので少しだけ安心した。
「アンナさん!そしたらスミレの治癒魔法の実験台になってくれない?? 練習もしっかりしてるし効果は保証するわ!!それにお代は要らないわよ!!」
「えぇ!いいのぉ? もちろんよぉ。スミレちゃんに是非かけてほしいわ」
「患者さんにかけるのはアンナさんが初めてになりますがよろしくお願いします!!」
「よろしくねぇ」
早速診察室へアンナさんを誘導して、椅子に腰をかけてもらう。
「……本日も腰で宜しいですか?」
「ええ。そちらでお願いしたいわぁ」
アンナさんの腰へ両手を
魔力は抑えて、魔法を抑えて……。
『──聖なる光よ、傷つき者に清き癒しを与えたまえ。……
両手にテニスボールより少し小さいぐらいの白い光が集まっていき、アンナさんの腰へ吸い込まれるように消えた。
「……スミレちゃん。凄いわ、いつも以上に軽い気がするわぁ!」
「えっ…、ほ、本当ですか??」
「ええ。腰以外も軽い気がするわ!ソフィアちゃんのも一流だけどスミレちゃんもセンスあるわねぇ」
元気に屈伸運動まで始めてしまうアンナさん。運動によって息がゼーゼーしているが……全身に大分効いたようだ。
「……そ、そうなのよ!スミレは凄いセンスがあってね!!直ぐに私なんか抜かされちゃうかも〜アハハ〜……」
にしてもやってしまった。
魔力はいつも練習で行っている2分の1程度にしたつもりだし全身を癒すつもりは無かったのだけれど。
ソフィアさんも小声で「大きさもいつもより抑えられてたのにね?」と不思議な顔をしている。
因みに私が異世界から召喚された巫女というのは、王宮内の人物とアシュク診療所メンバーしか知らない。巫女としての特異な力が治癒魔法の効果倍増以外にあるかはまだ不明ではあるが、私に利用価値があるとなれば争いの火種になる危険性もあるらしく国としては余り他所に知られたくない情報らしい。
王宮の保護下に置きたい……との意見もあったらしいが、一般人として働き生きていきたいという私の意向を国王様やノーマンさんは汲み取ってくれたらしく、診療所スタッフであるマーシュ先生が保護者役を買ってでてくれたと聞いた。
「──大分上達したし、いきなり倒れることも無さそうだからそろそろ患者さんにも初めて行きたいところだけど……」
「あそこまで明らかに効果が違うってなると問題ですよね……」
開始当初に比べると大分魔法の扱いにも慣れてきたのは自覚があるが、効果に関しては意識してもコントロール出来ないしどうしたらいいか分からない。
「さっきも中々小さめにしてるように見えたけど、更に少量だけ魔力を込めるって感じで練習を進めていって、若干の誤差ぐらいならバレないと思うからそういう感じにしてみる?」
「そうですね……。ずっと研修にして頂いてるのも流石に申し訳ないのでそちらでよければお願いしたいです」
「そしたら明日からそうするわね!……って、まだそんなこと気にしてるの? そんなことは気にしないでいいのよ!巫女様だろうが聖女様だろうが、スミレは私の可愛い可愛い後輩ちゃんなんだからね!!何も気を使うことはないのよ!」
ソフィアさんは本当に優しい人だ。
この優しさにいつまでも甘えている訳にはいかないし頑張らないと。
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