失踪した姉を探して辿り着いた手がかり、とあるゲームの炎上騒動にまつわる物語。
短いプロローグとエピローグを除けば、二本のネット記事の体裁のみで描かれた作品です。
面白いのは、物語としては確かに現代ドラマでありながら、でも明らかにホラーテイストな読み口であるところ。単純に、登場するモチーフがオカルト的・民俗的というのもあるのですけれど、姉の失踪という導入の不穏さに加え、「主人公が読んでいる記事そのものを読む」というこの形式が効いているのだと思います。まるで主人公の行動を追体験するかのような読書感覚。
リンクを辿れば誰でも行ける場所にありながらも、しかしこれまでその存在自体を知らなかった、身近なアンダーグラウンド。そこはある種の深淵でありながら、でも間違いなく「自分と同じ生きた人間」の住まう空間。そして、そこに自分のごく身近な人の、まったく知らなかった一面を見つけてしまうこと。この真相に迫る感覚、深淵を覗くドキドキ感がたまりません。
しかしなにより強烈なのは、それがただのネットロアの物語にとどまらず、もっと大きな歴史の一部に接続されてゆくところ。ホラーやオカルト的なモチーフや話運びを、しかし現代的な様式や現実の歴等に強く絡めながら語り通した、独特の重圧に満ちた作品でした。