第6話4人の王子

 ー4日前ー


 第一正妃様の紅蓮色の離宮『ルベル宮』の一室。


「“アルカヌム”が亡くなった?いつだ?」


 レリルール王国第一王子、別名『紅蓮の王子』と呼ばれるフレイム•ミラージュ•ヴァンデルン•レリルールが“アルカヌムルクル”の訃報を知らせに来た執事に聞いた。


「一昨日でございます」

「そうか」


 カチャとティーカップをテーブルの上に置き、緋色のみつあみに編まれた長い髪を朱色のマントとなびかせ、髪に結んだ金色のリボンが揺れてる。

 緋色のジャケットに付いた金銀の装束品が日光を浴びて輝く。


「父上のもと『プルプラ宮』へ向かう」

「承知しました」


 執事は静かに扉を開き、右手を胸に当て最敬礼をしたままフレイムを見送る。



 ーーーー



 フレイムは通路の先から歩いて来てる第二王妃を母に持つ、第二王子、別名『沈黙の王子』と呼ばれる垂れ目のコル•リディ•ヴァンデルン•レリルールの姿を見つけた。


「お前も父上に呼ばれたか」


 フレイムの言葉にコルはただ頷く。


 コルは褐色の肌が少しだけ見え、銀色に太陽と水をイメージさせる刺繍が入っている砂漠が広がる『サバラ王国』の民族衣装を身に付け、銀髪の外側にツンツンと跳ねた短髪にターバンを巻いて、フレイム以上に金と赤のネックレスや腕輪を身に付けていた。


(全員呼んでいるのか?)


 コルはまた頷く。

 それを見たフレイムはコルの肩を無言で抱き寄せコルの耳元で。


「今のには反応するな」


 誰にも聞かれないように小声でそう言うとコルは静かに頷いた。



 ーーーー



 第三王妃の深緑色の離宮『ウィルデ宮』の中庭で第三王子、別名『疾風の王子』と呼ばれるラピドゥス•ラーナ•ヴァンデルン•レリルールが双剣の鍛錬をしていた。


「あー」


 動きやすいラフな格好をしたラピドゥスが汗だくの身体にポニーテールに纏めた緑色の髪をまとわりつかせ、額の汗を手で拭い、つり目の瞳を困ったように垂れさせながら。


「親父に遅れるって伝えてくれ」

(このままじゃ行けねぇし)


 知らせに来た執事に伝えると、身体の汚れを一瞬で綺麗にする“浄化魔法”を使えないラピドゥスは風のように入浴室へ駆け込んだ。


 ラピドゥスは急いでシャワーを浴び終え、濡れた髪を一瞬で乾かしポニーテールに纏め、深緑色の軍服と腰に双剣をさして、薄緑色のマントをなびかせ。


「行ってくるわ」


 メイドに告げると風のように走って行った。



 ーーーー



「カナリア!」


 ラピドゥスが風のように走っていると、前方から全体的に淡いクリーム色の後ろ姿を見つけて、第四王妃を母に持つカナリア•ルスキニア•ヴァンデルン•レリルールを呼び止めた。そうカナリアが15年前に生まれた王子だった。


「お前も呼ばれたのか」

「うん」


 別名『微笑みの王子』と呼ばれ、国王陛下そっくりな金髪癖毛に母の故郷である『中ノ皇国』の民族衣装、クリーム色の生地に黄色で小鳥、金糸雀カナリアの刺繍が入ったチャイナを着てるカナリアはラピドゥスに微笑みながら頷いた。


「あー…、知っていただろ?」

「……………」


 ラピドゥスからの問いにカナリアも「何が?」とは聞かない、ただ微笑みながら頷いた。


「それ…と、第四王妃おふくろさん。

 どうだ?」


 カナリアは何も言わない、いや、言えない。

 第四王妃は15年前の『ニゲル宮』放火があり、自身の出産があった日から眠り続けている。


 国王陛下と『きょうだい』達と同じ淡い紫苑色の瞳が不安に悲しみに揺れながら微笑んでいた。

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