第5話金糸雀と【惚れ薬】と…
ー1年前ー
「~♪~~♫」
アウラは鼻歌を歌いながらルシオラと一緒に洗濯物を干していた。
2人は15歳になり、アウラの髪型のスタイルは小さい頃から変わらないが、腰までだった髪が少しだけ伸びていた。ルシオラも身長は伸びたが、13歳の頃から変わらないスタイルをしていた。
「きゃ」
「わ!」
アウラとルシオラが驚く程の強風が起こり、木々の葉と漆黒の髪が舞い上がり、普段は隠れているアウラの火傷の痕と淡い紫苑色の瞳が姿を表す。
「あっ!タオルが!」
ルシオラが飛ばされたタオルを取りに走り、アウラが自身の髪を耳にかけた時、ふと木の枝上に小鳥が、珍しい淡い紫苑色の瞳の
ーーーー
ー半年前ー
「師匠、私…ルシオラと一緒に継げる自信ない」
(”アルカヌム“の事を言っているのは分かるんじゃが)
「急にどうしたんじゃ?」
ルシオラがいない時を見計った様に、薬棚や別の棚に緑や青、紫色の薬が並べられ、天井から様々な薬草や干からびた
「……だって、まだ半人前だし」
「もう立派な薬師じゃよ。どうしてそう思うんじゃ?」
ルクルは目線を逸らすアウラの手を老いて皺くちゃな両手で包む。
「薬草や材料は粉末に出来るけど…、魔法で【魔水】は出せないし、他の魔法も使えない…、薬も【
「そんな事を気にしとったんか、人は誰にも苦手な事がある、苦手な事があってもいいんじゃ、誰かと…大事な人と補えあえる。わしとじぃさんがそうじゃた!」
ぽんぽんと優しく、アウラの手を何度も
「そんな悲しそうな顔をしとったら、ルシオラが心配するぞ」
アウラが【惚れ薬】しか作れないのは仕方ないんじゃが…と、そう思いながらルクルは落ち込むアウラを
「お昼出来……なにかあった?」
今日の昼食当番のルシオラが準備が出来たと知らせに来ると、ルクルとアウラの神妙な雰囲気を察して。
「なんでもない。今日の昼食はなぁに?」
「ええっと、アボカドたっぷりのサンドイッチと、それから」
プリンと聞いたアウラが「やったプリン大好き!」とルシオラとラブいちゃしながら、はしゃいでいる声を聞いてルクルはホッとする。
「わしやルシオラもおるし、アウラは大丈夫じゃな」
ルクルはとても優しい表情で小声でそう呟いた。
「そろそろ『次期“アルカヌム”選定試験』の準備をせんといかんのう」と、考えながらアウラとルシオラが待ってる居間に向かって廊下を歩いていると、ぐらっとルクルの視界が歪んだ。
ーーーー
アウラがルシオラとキッチンが備えられてる広い居間でアボカドたっぷりのサンドイッチ、コーンたっぷりのコーンスープ、ルシオラ手作りプリンブリュレ、ホットミルクがセッティングしてある、四角のちゃぶ台に座ろうとした時、自分達が歩いてきた廊下からガタンッと大きな音が聞こえた。
2人は「なんだろう?」と、廊下の様子を見に行くと。
「師匠ッ!」
「お婆様‼︎」
アウラとルシオラの驚愕に満ちた声が庵中に響き、廊下で倒れるルクルに駆け寄る。
ーーーー
空気が乾燥しない様に“魔法電化製品”の石油を使用せず、炎の魔法石で温める【セキユ・ストーブ】の上に置かれた、少しだけズラしてある、やかんの蓋の隙間からシューと水蒸気が出てる。
ベットの上に普段の健康的な肌色と違い、白みおびた肌になったルクルが眠っている。
「ど…どうしよう、この薬も効かない」
2つほど効かない症状があるが、それ以外はありとあらゆる病気を癒す【万能薬】の空瓶を持ったアウラが呆然と呟いて、横でルシオラが絶望した様に頭を抱え俯いていた。
【万能薬】は肉体的な病気は癒せるが、精神的な病気や自然な衰え…老衰には効かない。
「………違う…薬も試す…」
アウラとルシオラは「もう助からない」と頭では分かっていても、気持ちが追いつかず、別の薬を作り始める。
「アゥ…ラ、ルシ……ォラ。
はな…し…た……ぃ……」
ルクルの細々とした声がアウラとルシオラの耳に聞こえた。
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