西田春馬はどこにでも存在しうる。

今回から一話のボリュームがアップします。

なので更新頻度が落ちるかもしれません。

ですが失踪は決してありえません。

ご安心ください。

それから、応援してくださる方いつもありがとうございます!

これからも何卒宜しくお願いします


作者より

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☆時を戻そう☆

某芸人のように回想シーンを終えたところで、颯から明日の予定についての説明がなされた。まあ、すでに話が彼女の頭の中で整理されているため、基本俺が疑問を呈することはあっても否定したことはこれまで一度もない。


いや、違うな。俺が意見を否定しないのはもう一つ理由がある。


「明日は部活動説明会の日なのは知ってるよね?でも残念ながら軽音部は今現在部活としてみなされていない。だから明日の昼休みに1年生の教室を回って勧誘にいこう!」


そう言う颯の口調はいつもより明るかった。機嫌がいい時の彼女の眼もとはきゅっとしわが寄るためすぐわかる。満面の笑み、という言葉はこういう時に使うのだろう。また、幸せオーラ全開にしているJKなんて尊い以外の何物でもない。むしろこんな笑顔を見せられて従わない男がいるだろうか?


「異議なし。」


答えはNoだ。

かわいいは正義。かわいい絶対ジャスティス。





翌日、4時限目のチャイムが鳴るや否や颯が教室を飛び出していく。それに便乗する形で俺もついていく。

今日の予定としては1-1から1-6まで存在する一年生の教室に順番に颯が作ったチラシを配り、颯が考えてきた口上を颯が言い、次の教室に行く手はずとなっている。

……あれ、俺いらなくね?と思って颯に相談したところ、「私が作ったんだから自分で説明したほうが効率がいいでしょ?」だと。



場所は変わって1-1の教室前。

「失礼します!」と教室全体に響き渡る声で言った後、ずかずかと周りに目もくれず入っていく。当然1年生の注目は必然と颯のほうに向かう。


「軽音部、部員募集中です!!活動場所は部室棟、活動時間は午後5時からで検討しています!詳細は放課後部室に来てくれれば説明いたしますので、興味のある方はぜひ来てください!」


それだけ言うと前日に作成したチラシを配っていく。颯はこういうとき自らが動いて一人一人に手渡しする。丁寧に仕事をこなすのが彼女のルーティーンだ。


配り終えたら教室を出ていく。はずだったのだが、一人の男子生徒が俺たちを呼び止めてきた。


「すいません!自分入部志望です!高校に入ったら軽音部に入りたいと思っていました!!」


その男子生徒は茶髪で端正な顔立ちだった。整っているがまだあどけなさが残るような、しかしブレザーの裾から覗く腕は筋骨隆々としており、ガッチリという形容詞が似合う男でもあった。


「わかったわ。では放課後に部室に来てね。待ってるから。」

「了解っす!」

「いや、なんでお前らそろいもそろって即断即決なの?」


あまりにテンポが良すぎてつい突っ込んでしまった。ちなみにリアルでの突っ込みキャラは後々嫌われるぞ♡ソースは俺。陰キャは急に声張り上げて「え…あ…うん…」

となって気まずくなるまでがセットだ。ヤダもう思い出したら死にたくなってきた。


というか最近の一年はこれが普通なのか?

コミュ力も行動力もカンストしてそうな奴だったぞ。さては君ビーターだな?


冗談はさておき、ひとまずこれで部員確保ができそうだ。

あと5クラス全部こんなんがいたら最終的に5人を越してしまうのではないか?とも考えていたがそんな心配は杞憂だった。


残りのクラスは真面目な生徒にチラシを見られこそするものの、机に仕舞ってしまって(激寒)、そのまま放置。

あるいは素行不良な生徒に紙飛行機にされ、丸めてキャッチボールを始め、挙句の果てにそれをゴミ箱に入れるゲームで終了。誰にも興味を持たれずに終わってしまった。


結局、放課後に部室に来た生徒は1−1の男子ただ一人だった。


そいつは部室に入るやいなや颯に契約書、と書かれたプリントを渡され

「読み終えたらここにサインしてね」

とだけ言って室内の長机にノートパソコンをおもむろに取り出すと、黙って作業を始めてしまった。


「颯、いくらなんでもそれはないだろ…」

「ど、どうしたの春馬。まだ初日なんだからなにも落ち込むことないでしょ」

「いやそうじゃないでしょ!せっかく入部してくれそうなのに一言しか会話してねぇじゃん!というかお前も黙ってサインしてんじゃねぇよ!」


俺はそう言ってボールペンを走らせる彼を指さした。


「書けと言われましたので」

「そうだよ、何もおかしいところないじゃん。あとこの子の名前は戸部君だから。ちゃんと呼びなよ」

「へ、へへっそうっすよね、六郎木先輩」


俺が少数派なのかよ。颯のこの対応で薄情者とか思わないわけ?戸部くんよぉ。


しかし俺はすぐに気がついた。彼の視線が書面からチラリチラリと外れていることに。

この楽器と長机で部屋の大半が埋まっている部室で見るものなんて一つしかない。


「やば…めっちゃ尊い…へ、へへゲフッ」



ああ、そうか。

こいつものか。

そう悟った俺は彼の手をそっと握りしめ、目の前の颯に聞こえないようにこう囁いた。



「これからよろしくな、同士よ」


























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