不時着して
バブみ道日丿宮組
お題:憧れの惑星 制限時間:15分
不時着して
自分の惑星に帰りたいと思うことはあっても、行動することはない。
自らが宇宙人だと名乗りをあげても誰も信じてはくれない。
宇宙船があれば、まだ宇宙人かもしれないという多少なりのフォローがあったかもしれない。
けれど、船はもう存在しない。おまけに仲間もいない。
「ご飯じゃよ」
「うん、ありがとう。おじいちゃん」
その代わりに私には新しい家族ができてた。
おじいちゃんの名前は知らない。おじいちゃんも私の名前を知らない。
そう思うと、特別な関係なのかもしれない。
おじいちゃんには私が必要で、私にはおじいちゃんが必要だった。
あの時の私はとても困ってた。宇宙船が突如としてエラーをはいて、この惑星に不時着してね。誰も頼れる人がいないなか、雪が降る街道に座ってた私をおじいちゃんは引き取ってくれた。
どこの誰かもわからない私を必要だといってくれた。
そうして私はおじいちゃんの家に居候することになった。
私がしてあげられるのは、おじいちゃんの笑顔が消えないようにすることと、身の回りのお世話をすること。
でも、
「今日はなんの料理作ったの?」
料理はできなかった。私がいた惑星じゃ、料理はワンボタンで勝手に作られる。そのおかげで料理という概念はない。
台所に入ったこともあるけど……おじいちゃんみたいにうまくはいかない。
「それは見てからのお楽しみじゃ」
声に反応すると、おじいちゃんはにっこりと眩しい笑みを浮かべた。それだけで私の胸の奥がきゅっきゅと締め付けられた。もっときゅっきゅってしたくなった。
「楽しそうじゃな」
私を見てかおじいちゃんはそういう。
「うん、楽しいよ。おじいちゃんのおかげかな?」
年齢だけでいえば、私はおじいちゃんの数十倍もの時間を過ごしてる。
「そうか、そうか」
おじいちゃんのあとをゆっくり追う。とても小さな背中だけど、私という異分子を受け止めてくれた。
これからきっとおじいちゃんは数年も経たずに死んでしまうだろう。
でも、私は忘れないーーずっと私の中で行き続けるのだから……。
不時着して バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます