好き嫌い

バブみ道日丿宮組

お題:素朴なセリフ 制限時間:15分

好き嫌い

 好きなものはいくらでも食べて良い。そんな法律があれば、好き嫌いも減るだろう。

 いや……好きなものしか食べなくなるかもか。好みというのはそればっかで成り立つわけじゃない。

 苦手な部分が必ず外に出る。それが個性というものだ。

「お兄ちゃん、ん」

 妹が箸で僕のお皿に移動させてきてるのは、ピーマン。妹が嫌いな食べ物だ。逆に僕のお皿からは肉が抜かれてく。

「今お母さんがいないからできることだけど、バレたら怒られるよ」

 優しく言ったつもりだが、妹はふんと鼻息をふかした。

 これで学校1の美少女と言われるのだから世の中は荒んでる。まぁ……そのおかげで僕にも彼女という存在ができたのも事実ではある。

 いわゆる妹のお友達というものだ。年齢にして3つも離れてる。来年は僕の高校に入ってくるが、一緒に通えるのも1年か。冷やかされるのも嫌だし、ちょうどいいあんばいなのかもしれない。

 そんなわけで妹には恋人関係でたいへん世話になった。

「今日だけだからな」

 世話になった分くらいは、妹の願いを叶えてやりたいと思う。それは兄だからという意味合いもある。昔はお兄ちゃん、お兄ちゃんと後ろについてきたんだけどなぁ。

 いつの間にか、妹も大きくなったものだ。

「……ん、ありがとう」

「おう」

 お母さんが帰ってくるまでの間にピーマンを口の中へと急いで運ぶ。

 そんなに早く食べれる方ではないが、トイレに立ったお母さんが数分もかかわるわけはない。

 口をもごもごしてるうちに、そのお母さんが戻ってくる。

「あれ、ピーマン食べたの?」

「うん、まずかった」

 妹の言葉に嬉しそうな顔を浮かべるお母さんに少し申し訳ない気持ちが生まれる。

 が、事実は隠さなければならない。

「ごちそうさま」

 バレる前に妹が先に席を立ち、それを追いかけるように僕も席を立った。


「……メールしおこうかな」

 部屋に戻ると、明日お弁当で苦戦するだろう妹のために、彼女へとメールを打つ。

『なんとしてもピーマンを食べてあげて』

 なんていうか、恋人からのメールにしてはひどい内容だ。

『好きだよ』

 といかにもつけたした感はあったが、一応付け加えておくことにする。

 彼女からはすぐに返信があり、了承という短い文章が添えられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

好き嫌い バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る