第3話
ちゃぶ台に置かれた麦茶を横目に心の底の苛立ちと顔を合わす。僕はどうしたい?そうだよ、叔父を返り討ちにしたい!そうと来れば早い。あの髭が、ばっしり張り付いた口をあんぐりさせてやる。なんだ?台所から声が聞こえる。昼ごはんが出来たらしい。「俺はトイレに行くからちゃぶ台に運んでくれ」との事らしい。これさえ出しとけば夏を味わえると言いたそうな無愛想な素麺と田舎特有の目眩がする程に鮮やかな緑のレタスのサラダを見て、電球の錆が取れて眩しく光った。素麺に砂糖を入れよう。砂糖を大さじ2杯、ホットケーキの如く甘い素麺の完成だ。トイレから出てきてちゃぶ台に座る。それらを持って来て僕もちゃぶ台に座る。「いただきます。」平然を装い素麺を食べる。なんだこれは____________「どうだ?美味しいか?でもびっくりするよなぁ。こんな事が起こるなんて思っても無かったよなぁ。ビックリしたな。ノストラダムスの予言を初めて聞いた時の様に、さっきまで余裕綽々でリードしていたゲームが一気に逆転するように。素麺が、甘いなんて思いもよらないこと。どうだ?美味しいか?今聞いてるのは"素麺"の味じゃない。"予想外"の味だ。」予想外を口に含んだまま僕は目を丸くした。どうやら彼は気づいていたらしい。目と鼻の先にあるしわくちゃの笑顔、下品な笑い声、勝ち誇った時に出る理屈臭い話し方。ほんの半径17cmのちゃぶ台。だが叔父との距離は17km以上に思えた。勝てそうに無い、そう思い僕は老衰し啼くのを諦める蝉の様に返り討ちを諦めた。
返り討ち 近森 烏合 @hatahai
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