第2話
してやったり顔でこちらへ歩み寄ってくるその中年男性を見ながらこの暑い日の始まりを感じた。あの木で馬鹿みたいに何も考えず鳴いている蝉が余生を全うするまで僕はこの家に居る事になる。こちらも居候の身。嫌悪感を露骨に出すのは母の兄と言えども流石に無礼だ。「叔父さん、こんちゃ!」勢い良くそう言っとけばカラッとした良い印象を与えるだろう。今までそれでまかり通ってきた。叔父さんは「うん、麦茶でも飲むか?」と、僕を待たしたことには触れもせず、麦茶を勧める。とりあえず中に入り、腰を下ろす。田舎なのでなかなか広い家だ。都会の真ん中だと200万はくだらないような家をしている。ちゃぶ台と同じ色の麦茶が出てきた。どれ、一口、、苦い。とても苦い。茶っぱのカスを煮詰めたような苦さ。母がいつも夕飯時に食べろ食べろと急かすあの魚の臓物の味がする。「苦っ!なんすかこれぇ!?」そう叫ぶとどこからか叔父の声がして、「おぉ、すまんすまん。がはははは!」と豪快な笑い声が聞こえる。青い絵の具をぶちまけた空の下で短命な昆虫が木にくっついている。その昆虫にまだ死期は迫っていない事を僕は知っている。
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