返り討ち

近森 烏合

第1話

窓を叩くかのように激しくセミが鳴いている。何だこの暑さは。そう思い、青しか映し出されていない窓を睨んだ。今日の僕は機嫌が悪いんだ。叔父の家に行くから。僕は叔父の全てが嫌いだ。あの無責任な発言、顔に深く刻まれたしわ、野球観戦となれば子供みたいにはしゃぐ。それに聞いて欲しくない事ばかり聞いてくる。そんな叔父が嫌いだ。電車に揺られ僕は外を眺めていた。1面の畑に入った。畑には朝顔が沢山栽培されていて奥には大きい山が見える。お年玉をくれない憎き悪魔の牙城への道中にしちゃあやけに綺麗だ。もっと毒の川とか流れててもいいんだけど。そんなことを思ってる内に電車は止まった。とっても田舎だ。バスに乗り15分。叔父の家に着いた。あたりは1面田んぼで典型的な田舎って感じの村だ。あぁ、面倒くさい。ここで帰る訳にも行かないし、とりあえずピンポンを押す。「こんにちはぁ」なっかなか出てこない。待てど暮らせど来ない。駅前で買ったお茶なんてもう飲み干してしまった。途方に暮れ辺りを眺める。奥の草むらで何かが動いてる。少し細く長いシルエット。頭にはタオルを巻いていて、濁った白でところどころ茶色く土のついた服を着ている。あのしわ。叔父だ。僕が此処で待ってるのを嬉々として眺めていたに違いない。なんて人だ。叔父がこちらに向かってきた。

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