「お前が盗んだのは馬じゃない。アダム・アーティの馬だ」

 A級冒険者パーティで盗賊として活動するアダム。その仕事ぶりは完璧で、仲間すら気づかぬうちに、こっそりモンスターを倒してひそかに罠を解除していく。しかしその完璧さが仇となり、仲間たちからは何もしていない無能のレッテルを張られ、パーティを追放されてしまう。

 それだけならまだ良かったのだが、そのパーティの奴らはアダムの家を襲撃し、彼の家の財産、そして彼が大切にしていた馬を盗んでしまった……! この出来事をきっかけに引退したはずの伝説の殺し屋――アダム・アーティ――が再び闇に舞い戻る……!

 キアヌ・リーヴス主演の某殺し屋映画のオマージュ要素が強い本作品は、元殺し屋による壮絶な復讐劇。伝説とうたわれた男が単身でマフィアや雇われた殺し屋を容赦なくなぎ倒していく姿は圧巻。どれだけ強い殺意を浴びせられようが、ほとんど感情を見せずに淡々と冷酷に返り討ちにしていく姿がたまらない。

 また元ネタとなっている映画の名シーンを異世界風の描写で様々に再現しているのも遊び心が利いていて面白い。


(「異世界版 裏社会の歩き方」4選/文=柿崎憲)