残念な頭

 何言ってるのだこの娘は?

 異世界?は?

「異世界って中世風のいろんな種族がいるあの?」

 美夜は勢いよく、そう!と返事をするのだった。

 意味がわからない、異世界?は?

 何を言っているのだこの娘、とうとう夏の暑さで頭が沸いてしまったのか。

 私はそう考えながらも、彼女が嘘をついているように感じられないところに訝しさを覚えた。

「どうやって異世界に行くの?」

 流石に納得しきれないので、そう質問すると美夜は戸惑いながら。

「え、それは...」

「まさか単純な思いつきってわけ?」

「仕方ないじゃん、だって灯ちゃんが無茶振りしか言わないんだもん!」

「それはだって....」

 私にも非があるのだろうか?ほんとにそうか?

「大体、灯ちゃんいつもいつもそうやって否定から...」

「ん...」

たしかにそれを言われたら、勝てない。

でもどうするべきか、今更新しい案を出すにしても多分否定されるし。

それにしたって異世界は絶対に行けないし。

う〜む。

「あるもん、異世界行けるもん。」

え?

あ、そうか暑さで頭が沸いてしまったのか。

仕方ないこと、暑いし私と喧嘩もしたわけだし。

「それは無理じゃない?」

「思い出したし、行けるよ!」

「え?なにが?」

だめだ話が噛み合わない。

とうとうイカれてしまったか。

仕方ないこれは私の責任だ、彼女をこんな風にしてしまった原因は私なのだ。

「ごめん美夜私のせい、美夜をこんなにしちゃったのは私のせいだから。」

私は泣きながら美夜に謝る。

「え?何どうしたの?」

当の本人は気づいてない様子。

「ごめん、美夜の頭がおかしくなって異世界に行けると思っちゃったのは私のせいだから。」

「え?」

「ん?」

静まり返る。

「私頭おかしくなってないよ!」

何をいうか。

「いやいや、だって異世界!行けるわけ無いじゃん頭おかしくなったとしか思わないじゃん。」

「えー!」

「美夜の頭が残念なのは昔から知ってたけど、私のせいでこうなったのもあるからな。」

「ちょっとまって。」

「大体そもそも.......」

「だから私の話を聞いて!」

それから私が話を聞くまでにかかった時間は1時間だった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る