第17話 俺がゴーレムだ


 体長は15メートルほどの巨体。更にどんな攻撃もある程度は防ぐ岩石のような体。俺は神の子ゴーレムに変化した。

 ゴーレムとは元々神が人間を作る前に初期型として作ったとされる土人形だ。だが身体の頑丈さと強さだけがあるだけで知能は低い。これでは意味が無いと廃棄されてしまった代物だ。


「うごおおおおおおおおお!!!!!」


 それでも今は、今はこのゴーレムの身体に感謝する。雷撃を食らっても削れるだけで貫通はしない。腕を振るえば突風が起きる。ラーケージに渋い顔をさせられた。


「……醜い姿だ」


 それは大きな蜘蛛と化したマラーレーイに俺も思った事だ。どうしてそんな姿になってしまったのか。今なら分かる。彼にも守りたい何かがあったのだろう。


「うごおおおおおおおおお!!」

「ちっ。面倒な」


 大きな岩石の腕を振り回し、ラーケージに攻撃をする。さすがにラーケージもこの強度の岩を身体から発する電磁波のみで破壊する事は出来ないのか、四つ羽を駆使して避け出した。雷撃も耐えれる。


「うごおおおおおおおおお!! うごおおおおおおおおおおおお!!」

「この木偶の坊が!」


「ぐおおおおおおお!?」


 先ほどよりも強い雷撃に体の自由が一瞬だが奪われてしまった。さらに強い電撃を食らう前にラーケージを仕留める!


「うごおおおおおおおおおおお!!」


 地面を握りしめ、ラーケージに投げた。ラーケージは抉られた地面に視界を遮られるが雷撃で壊す。だが、そこを狙っていた。


「うごおおおおおおおおおお!!」


 崩れた泥を掻き分けるようにラーケージに巨大な手を突き出した。ラーケージの身体は雷を纏っているがこの手に痛覚は無い。


「しまっ!? ぐっ!?」


 雷さえ通さなければ怖くない。ラーケージを巨大な手で握り込むことに成功した。握りしめて殺してやる。そう意気込んで拳の握力を強める。


「ふ、ふふふ。貴様の様な歯ごたえのあるやつは久々だ……な!」


 負け犬の遠吠えかと思ったが、ラーケージは身体に溜めていた雷を全力で放電し始めた。岩石の手が崩壊し始てしまう。まずい。このままでは逃げられてしまう。


「うおおおおおおおお!!」


 空いている左手で更に上から押し固める。だが、放電は止まらない。


「今すぐこの汚い手を離せ!! この木偶の坊!!!」

「ぐおおおああああ!?」


 両腕が砕け散っていく。破壊されれば腕の再生まで時間がかかる。どうする。もう体当たりくらいしかないぞ。


「しゃがめ! 馬鹿でかゴーレム!」

「あ!?」


 藁にも縋る思いでその声に従い、しゃがんだ。すると背中を何かが走り抜けているのを感じそれも一瞬で消えた。身体をもう一度上げ直す。


「ていやあぁああ!」

「貴様! 生きていたのか!」


 目の前で起きていた光景に面食らってしまう。ラーケージに自身の体長よりも長い棒で挑む少女が居たのだ。

 日焼けで褐色の肌をしており、大事な部分が見えてしまうのではないかと思うほどの半袖の服を着た短パンの服装を着こなし。現在の俺と同い年くらいの少女がラーケージの帯電した体を物ともせずに棒で突き飛ばした。


「村の連中の仇取れるまで死ねるかよ。この冷血女!」


 突きを食らったラーケージは滞空出来なくなり、沼地の浅い場所に墜落してしまう。吹き飛ばされ、沼地に叩きつけられたラーケージは最初の神々しさは消え、泥と土に塗れてしまっている。ざまぁないぜ。


「堕天神だけ生き残るとはどこまでも災いだな! 貴様らは!」


 そうか。あの子が滅ぼされた村に居たという堕天神か。まるで武神オノダクラだな。上から目線で喧嘩っ早いところがそっくりだ。


「ハハッ! どうした! 村の時より弱ってるな。あのゴーレムに放電しすぎたんじゃねえか?」

「くっ!?」


 蹴り。殴る。振るう。ラーケージにあれが通じているのはあの岩石の手を壊すために帯電量が減っているからか。なるほどな。ならば今がチャンスだ。


「ふんっ! うおおおおおおおお!! 退け! 女ぁ!」

「なっ!? 滅茶苦茶な!? む、むがぁああ!?」

「うぐうぅあ!?」


 ゴーレムの身体を解き、宙で浮かんだ岩を丸め上げる。15メートルのゴーレムを形成させていた岩石だ。とてつもなくでかく、肉弾戦に集中していたラーケージとこれは仕方ない事だが堕落神の少女が避けられる範囲でない事を見越して投げつけた。


「くっ!」

「私も痛いのやだけどてめえ倒すためなら巻き込まれてやらぁ!」

「な、き、貴様ぁ!」


 少女は逃げる所かラーケージを羽交い締めにして岩石が直撃するのを待ちだした。正気か? 正気じゃない。

あいつ、まさか、オノダクラか!?


「お、オノダクラ!」


 そう呼んだのも束の間、岩石によって二人を圧し潰してしまった。まぁ、ラーケージなんてどうでも良いが……いや、正直オノダクラもこれで死ぬとは思えない。


「はぁ。でもやったぞ。大分、地形は変化したけどな」


 沼地も半分以上盛り上がってしまった泥や土で埋め立てられてしまい、大きなクレーターが何個も出来てしまっている。


「ユマロー……いや、アルグレイ。感謝する」

「マラーレーイ……」


 蜘蛛の姿では無く老人の姿で現れたマラーレーイはフラフラだ。顔の血相も良くない。蜘蛛の姿では巻きまれると思い、その姿なんだろうが消耗は激しくなるだけだろう。

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