第16話 サラマンダーの分身体から情報収集
翌日になり、放課後に崚汰は祖月輪探偵事務所に訪れた。
「こんにちは、鶩名さん」
「ああ、小鳥ちゃん。僕のお願いを昨日しっかり守ってくれたようだね」
崚汰は鶩名の傍まで行き、ゴブ先輩がじろっと見てきたので軽くお辞儀する。
自分はそのまま鶩名さんに尋ねる。
「はい……でも、マッチを何に使うんですか?」
「少年に魔法という物を見せようと思ってね」
「魔法、ですか?」
魔法、と聞いて少しワクワクしてしまう自分がいる。現実にそんなものが存在しないと感じていた自分にとって興味が惹かれるワードだからだ。
「ああ、君も見たいだろ?」
「そうですけど……」
よくよく見れば、テーブルの上に魔法陣が描かれた紙切れがある。
生地も羊皮紙っぽい感じで、悪魔召喚風な雰囲気も漂っている。
魔法陣に使われているのは赤いインク? ……いや、血、か?
俺は鶩名さんの方に降り向いた。
「鶩名さん、魔法陣の模様に何を使ったんですか?」
「
テーブルの上に新たに置いた
「……さぁ、召喚に必要な工程を開始しようじゃないか。崚汰君も問題ないね」
「……は、はい」
崚汰の胸は高鳴る。
鶩名はゴブ先輩に目配せをすると、事務所の窓を閉める。
「……さぁ、始めるよ」
鶩名さんの一言口にして目をスッと閉じた。
「
蝋燭の小さな火が、竜の頭にも似た姿を取る。
『……汝の名は?』
「祖月輪鶩名……君の本体の友人さ。最近放火しまわっている君の分身体を召喚した人間の痕跡を知りたい」
『……不許可、契約に違反する』
「君たちが最近多く呼ばれた場所を教えてくれるだけでいい、お願いできるかな?」
「なんで場所なんか、」
「静かにしろ、バカ後輩」
ゴブ先輩に口を隠され強制的に黙らせられる。
『……対価は?』
「もちろん、薪をあげるよ。これに印を残してほしい」
鶩名さんはサラマンダーの分身体に、紙切れの地図を見せる。
『……了承。竈は?』
「台所にあるよ、おまけにピザも用意しよう。準備はしてある」
『……わかった、地図を出せ』
「ああ」
鶩名さんは地図を手に持ちながら、蝋燭に向けると小さな焦げをつけた。
「それじゃ、ゴブ君。蝋燭を竈に持って行って」
「わかりました」
ゴブ先輩は台所へ蝋燭を運んで行った。
……あれだけで何が解かるって言うんだろう。
鶩名さんは地図を見る。
「……うん、ここかぁ」
「何か分かったんですか?」
「ああ、見るかい?」
横から崚汰は地図を見る。分身体がつけた焦げ跡は、道路を差していた。
一般人が放火して回っている、という線なのは確かな気がするが。
なぜ道路……?
「……ここか」
「どこなんですか?」
「神楽坂の路地裏のようだね、一度ここに向かおうか」
「今からですか?」
「ああ、問題ないだろう?」
「……わかりました、ゴブ先輩! そういうわけなので、俺たち行きます!」
「とっとと行けや、はよしろ」
「は、はいっ」
俺は鶩名さんに従うことにした。
急いで、指定された場所に二人で東京のとある路地裏へと向かった。
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