第12話 今後について
鶩名さんと俺は紅茶を飲みながら、彼女が先に話題を切り出した。
「……それじゃ、今後の件について話をしようか」
「は、はい」
「まず、君が僕の助手になる都合上、君自身への給料は渡すよ」
「……探偵業って、そんなに儲かるんですか?」
俺が知る知識では、探偵業は貧乏なのが基本だったような気が……?
「普通の仕事の時はあまりないけど、僕の基本は神秘側の事件が多いから他の神秘探偵の事務所よりは保証できるよ。15万から30
万くらいでいいかな? 仕事の内容によってさらね上がることもあるけど」
「嘘でしょう!?」
「? おかしいこと言ってるかい?」
崚汰は目を見開く。鶩名は至極のほほんと言った。
「ふ、普通の探偵業って、アルバイトでも2、3万程度なんじゃ……?」
「僕の事務所の助手ならアルバイトよりも高いに決まってるだろう?」
「え? ……そういう、奴なんですか?」
助手さんのお給料って高いのだろうか。
鶩名さんが言うんだから、そうなのかな……? 俺がミステリー小説などに関する一般小説を嗜んだ経験がない弊害が出ている気がする。
「もちろん、僕の助手を涙で枕を濡らさせるわけがないじゃないか」
か、カッコいいっ。
む、鶩名さんイケメンみたいなこと言ってる。
「……そ、その学校は、今の場所のままでもいいんでしょうか?」
はっきり言って健太と住んでいた実家でもある家は、あまり出たくはない。美星空高等学校は千葉にある。東京の新宿からここに来るのもお金は掛かるが、給料内容がそれなら普通に来れるはずだ。
「それは君次第かな、もし都合が良ければ僕が保証人になってとある専門学校に通ってもらうのもいいと思うけど、君が決断すべきことだしね」
「専門学校? どこのです?」
「そうだね、日本の東京のとある一角に隠れたとある専門学校に、行ってもらおうかな」
……東京にそんな学校が? 日本の首都である都市であるはずなのに隠れてるのか。
東京の学校はわからないな。
俺、地元の居酒屋やファミレスとかでアルバイトをするつもりだったし。
いや、鶩名さんなら神秘探偵に関連した学校だよな。
……つまり、その言葉から察せられる学校ってことは。
「もしかして、神秘探偵を育成する専門学校とかですか?」
「正解、感は悪くないんだね」
いやその話の流れなら誰でもわかると思いますけど。
「転校しろ、ってことですか?」
「ああ……名前は、
「……どういう学園なんですか?」
「外面は普通の学園だよ。美術関係や音楽関係、心理系や数学系などなど、色々な数多の分野の勉強ができる」
「じゃあ、みんな頭がいいんじゃ」
「全員が頭がいいわけじゃないよ。基本的に神秘探偵の卵たちの育成をする学校ではあるけど、必ずしもスカウトした相手が特定の分野に優れている子しか、スカウトしないものだろう? 頭がいい悪いは関係なくさ」
「そ、それはそうかもしれないですが……」
「一般人にも気づかれないよう最低限の学園祭や運動会だってあるかな。君が望めば寮にだって入れるよ」
「……う、うわぁ」
い、意外に普通……って受け取ってもいいのか? 専門学校に通うって基本金が高くつくのもあるから、余計遠慮はしていたけど。
「君が僕の助手になるなら、事務所の入口の扉を君の家に接続させられるし……どうする? 学園に通う保証人は僕がなることもできるけど」
「……それで、健太を楽にさせられますか?」
「どういう意味かな」
カチャリ、と鶩名さんは自分の持っているソーサーにカップを置いた。
「……健太に将来の夢に向かって行かせられやすくなるなら、俺はその専門学校に行くことは嫌ではないです、ただ」
「ただ?」
「……もう少しだけ、健太と一緒にいられる時間が、ほしいんです」
わかってる、このまま俺が東京の学園で生活すればおそらく寮生活になる。
もしそうなったら、健太一人で生活をさせることになる。
……俺は父さんと母さんに約束したんだ、健太を守るって、だから。
「……なら、高校を卒業してから考えるかい?」
「え?」
「健太君は、小学何年くらいかな」
「5年、ですけど」
「なら、高校を卒業してからでも遅くはないね。もちろん、健太君が中学生の間は僕の知り合いに面倒を頼むから」
「……でも」
「もちろん、助手としてのお給料もあるから健太君の生活費や健太君の将来行きたい学校への貯金を貯める感覚でいいよ。僕の所なら、厚生年金程度の稼ぎは確実に保証できる」
「……本当に、いいんでしょうか」
崚汰は俯く。ぎゅっと拳を強く握った。
上手い話すぎる、と思うが鶩名さんが嘘をつくような人には見えない。
鶩名さんの善意を無下にしてはいけない。健太のために、鶩名さんの助手として働けば健太が将来、なりたい職業に行かせられるなら……その方が確実というのならば、その道もいいのかもとは感じる。
……俺がセークレートゥムが見えることを隠し続けても、きっといつかボロが出る、将来的に必ず訪れるかもしれない未来なんだから。
「……崚汰君、今すぐ答えを出さなくちゃいけないわけじゃない。まだ、一年くらいの猶予がある。その間で考えてみるのもいいんじゃないかな」
「……はい、そうしてみます」
鶩名さんがカップをテーブルに置いてにこやかに微笑んだ。
「じゃあ、いつでも来てね崚汰君。待っているから」
「……はい」
そうして、俺は今日を持って神秘探偵、祖月輪鶩名の助手となることになったのだった。
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