第15話(7)
「どうせ死ぬなら共に、という事だ。さあどうする、英雄様。最後の最後で、衝撃の事実が発覚だ。判断できないなら、オレが舌を噛んで起爆させてやろうか――ァ……? ガ……?」
ベロを出していた、魔物。哄笑を浮かべていた彼の胸部に、マティアス君の短剣が突き刺さりました。
「まt、マティアス君!? そうしたらマティアス君が……っ」
「死には、しないよ。大丈夫。これは動揺によって不意を突こうとする、悪あがきだよ」
それでは……。今のは、嘘……?
ほんとう、に……?
「ちっ、違うぞ雄‼ 悪あがきではなく事実だ‼ これ以上この身を刺せばっ、その心臓は本当に――」
「元宰相閣下、数分前を思い出してください。俺はさっき、魔王の悪巧みは悟っていた、と言っていたでしょう?」
「っっっ!!」
「だから、視えるのですよ。その2つある瞳の奥にある、死への恐怖と焦りがね」
そうでした……っ。マティアス君には、そういう目がありました……っ。
「くそ……っ。くそ……っっ。くそぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!」
「残念。今日は復活の日ではなく、終焉の日でした」
短剣を握り締めたマティアス君が更に近づいてゆき、「どうせ死ぬなら、その前にお前を殺してやるぅううウううううううううううううう!!」。彼は大きくジャンプして――私を、見据えました……っ。
「どんなに刺されても、そこの雌わぁっ! 貴様の愛する存在だけわぁっ、道ずれにするぅぅぅぅぅぅぅぅ!! さあっ! あの世に、一緒に逝こうぜぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
「……残念だったな。このあとのイリスの予定は、ランチの再開。そしてエスコートをするのは、お前じゃなくて俺だ」
目で追えない程速く左右の手が動いて、魔物は空中で――丁度マティアス君の真上で、串刺しに。そうして首を数多の剣で貫かれた彼の四肢から力が抜け、そのまま真下へと落下していきます。
「ィギ……。イギィィィィ……!」
「俺にとって彼女は、何よりも大切な人。そんな人の安全は最優先で、無策なワケないがだろ? 何もかも想定済みだ」
マティアス君は向き直りながら優しく微笑み、こちらを見つめたまま右の手を真上にかかげます。そうしているとゆっくり、その場所へと魔物が降ってきて――
「ギァァァァァァァァァァァアアアアァァァァァァァァア………………」
――真上へと伸びている剣に突き刺さり、絶叫。
背中の中心に深々と剣が刺さった彼は耳を劈く悲鳴をあげ、やがて大きな黒い霧となって消滅したのでした。
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