第11話 罠の始まり エーナ・ファブ(王女)視点(3)

(警告を破ったお前達に、容赦はしない。|大逆罪などで親子揃って処刑されたくなければ《最悪の事態を回避したいのであれば》俺と同じ声量で何もかもを吐け。いいな?)


 見間違いでも、聞き間違いでもない。彼は冷たい目と声になっていて、理性を保っている……。


(念のため、大声は決して出すな。助けを求めるな。いいな?)

(わっ、分かりましたっ。従いますっ。服従しますわっっ)


 今のこの男の両目は氷のようで、危険。目的を果たす為ならなんであろうと、平然と行いそう。何をされるか、分からない。

 だから……。それこそ本能が負けを認め、気が付くと何度も何度も頷いていた。


(な、なにを話せば――お話すればっ。いい、んですの……?)

(まずは、今回の計画だ。計画内容の詳細、その過程や関係者を全て教えろ)

(はっ、はいっ! 承知致しましたっ!)


 打つ手を考えていた事。アドリク宰相が妙案を出した事。ドリンクに媚薬を混ぜた事。震えそうになる声を必死に抑えながら、説明をした。


(そうか、あれは性欲の薬だったか。思っていた通り、俺を狙ってきたな)

(思っていた通り……!? まさか……。貴方は何かが盛られると分かっていた上で、ドリンクを飲んだ……!?)

(ああ、そうだ。俺は毎日様々なゴミを食らっていた影響で、そういうものにはある程度耐性があるしばらく耐えられるからな。尻尾をために、敢えて受け身に回っていたんだよ)


 全ては、この人の手の平の上。わたくし達はずっと、コントロールされていた……。


(となると怪しいのは、立案者であり廊下からこの様子を探っていた宰相。本来決めつけは愚行だが、間違いないだろうな)

(あ、あの。彼は――)

(この先の問題に関しては、お前の情報は意味を持たない。俺が知りたいことは以上で、ここからは『命令』をする)


 また目付きが鋭利な氷のようになり、首筋に刃物を添えられている感覚に陥る。そのため自然と半泣きの状態になってしまい、再び何度も何度も頷きを返す。


(俺が予想以上に興奮をして吐き、薬の効き目が弱くなって失敗してしまった。それに、もう一つ。いざ身体を重ねる時になると、怖くなってしまった。国王と宰相にはそう説明し、そののち国王だけには有りのままを伝えて手を引かせろ。そして理路整然とした理由を――これから俺が伝える内容をそのままアドリクに伝え、お前達は大人しくしていろ。いいな?)

(はっ、はいっ! 説明して有りのままを伝えて手を引かせ大人しくしています!!)


 間髪入れず頷き、その内容を


(お、覚えましたっ。順守致しますっ。そ、そうすれば、ほんとうに……っ。た、たしかに……っ。わたくしを、わたくしたちを、見逃してくださるの、ですよね……?)

(英雄の名を使い、利用したあと親子まとめてしてもいいが――。この手が人の血で染まると、悲しんでくれる人がいるからな。その上で親子揃って地位を実弟の大公一家に譲り、表舞台から消える。そう誓うのなら、処刑だけは目を瞑ってやる)

(ちっ、誓います!! 譲りますっ!! わたくしもお父様も金輪際っ、この国にも政治にも関与しません!! ぜったいにぃっ!!)

(いいか、これが最後のチャンスだ。もしもう一度破るのであれば、俺は躊躇なくお前達を消す。誰にも、悟られない形でな。…………二度目と、おかしな真似をしてくれるなよ?)


 その言葉と視線に大粒の涙を零しながら首肯して、の指示で服を着て部屋を飛び出します。

 そしてそのあと、


「エーナ様!? どうされたのですか!?」

「アドリクっ! 実は――」


 命じられたことを忠実に行い、お父様に全てを伝えたのでした。

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