1-3.メタ読みに翻弄されるGM

GM そんなこんなでキミたちは鉄道を降りて、さぁフレジア森林国へって感じになるけど。ここで無事にフレジア森林国につけるかどうか判定して……もらう、つもり、だったんだけど……。


サイネ 流石に……故郷への帰り道くらいは覚えている……ドヤァ。


 くっ、ストマックがスタンドしそう。


GM それじゃあキミたちはサイネに案内されながらフレジア森林国へ向かうんだけど、その道中でスカウト/レンジャー+知力の判定を振ってもらおうかな。目標値は12。


リーゼ 私は持ってないから平目ですわね。12以外で失敗。(コロコロ)う、10が出ましたけど、こんなところで高い出目を出されましても。


ルジェ 12ならピッタリ成功デス。


ユイ アタシも成功したよ~。


サイネ ……妖精たちが眠そうにしている。11で失敗。


GM ちなみに今のは「天候予測判定」だったんだけど、ルジェとユイはもうすぐ雨が降ってきそうだなーっていうのがわかるね。早くテントを張って雨除けをしないと体力を消耗しそう。


ユイ そういうことなら、「あ、みんなー、雨が降りそうだからいったんテント張ろっか~」と呼びかけるよ。


ルジェ 私もユイの言葉に続いて、「そうデスね。どうやらかなり激しい雨が来そうデス」と口にしマス。


リーゼ 「ありがとございます」と、口にしながらテキパキと野営の準備をしますわ。


サイネ 妖精たちにやらせたい……GM、演出で妖精たちに設営準備をさせてもいい……?(意訳:【サモンフェアリー】でMPは消費したくない)


【サモンフェアリー】は妖精を召喚して戦わせたり、サポートさせたりすることができる。ただしMPコストが重い。


GM それくらいの演出はいいよ、データ的に何かあるわけでもないし。


サイネ じゃあ妖精たちに任せてのんびりしている……。


GM そんなあなたにスイートピーが話しかけてくるね。


スイートピー 「お姉ちゃんは、テントのじゅんび、しないの?」


サイネ 「少女……よく覚えておきなさい……。妖精使いとは、妖精を使役するもの……自分が動く必要などないのです……そう、すべては妖精に任せて、自分は余暇を楽しめばよい……」


スイートピー 「お姉ちゃんのことば、むずかしい……妖精さん、かわいそう?」


サイネ 「妖精にとっては、主に仕えることこそ喜び……これはむしろ仕事を与えてあげている……いいこと」


スイートピー 「ふえぇ……そうなんだー」


 スイートピーちゃん言いくるめられちゃった。冒険者たちの言動に影響を受ける予定だけど、これ、絶対悪影響だよなぁ……。


ユイ アタシも魔神さんを呼んで手伝ってもらおうかな?


サイネ それはいけない(真顔)


 そうして冒険者たちは無事にテントを張り、雨をやり過ごすことができた。なお、サザンさんは男なのでひとりだけ別テントで休んでいたことをここに記しておく。


GM で、無事に雨をやり過ごして休息を取ったあなたたちはさらに進むんだけど、途中で河が見えるね。そんなに大きな河じゃないけど、雨のせいで増水している。ちょっと渡るのに苦労しそうだけど、飛び石があるからそれに上手く飛び移っていけば苦労せずに向こう側まで行けそう。


ユイ 飛び石……? GM、その飛び石にデーモンルーラーの【ヴェノムブレス】撃ちたいんだけど、いい~? 毒の霧だから、本当に無機物だったら何も影響はないはずだよね~?


GM ゴホッ、ゴホッ……飲み物が変なところに……。


【ヴェノムブレス】はデーモンルーラーの魔法のひとつで、口や手から毒の霧を発生させる。ダメージ量は低いが、広範囲に対して攻撃できる。


リーゼ い、いきなりどうしたんですの?


ユイ そろそろ魔物が出てくる頃合いだと思うんだけど、飛び石に擬態する魔物がいるんだよね~。近づいて危険感知判定に失敗したら不意打ち状態で戦闘が始まっちゃうんだけど、たしか目標値がけっこう高かった気がする~。


ルジェ なるほど、そんな魔物がいるのデスか。


ユイ そうそう、前に別の場所でやったシナリオでも飛び石に擬態するステッピングリーフが出てきたからさー。


GM えっと、あの……いや、いいけど、え、本当にするの?


ユイ みんな、やってもいい~?


サイネ 私は構わない……。


リーゼ そうですわね。物は試しです。


ルジェ はい、よろしくお願いしマス。私もいつでも【異貌化】からの【ライトニング】を撃つ準備をしておきマス。


【ライトニング】は直線上に貫通する範囲系の魔法攻撃だ。先制を取ってからの【ライトニング】は鉄板戦術である。


GM あ、はい。じゃあ、えっと、ユイ、判定お願い……。


ユイ いっくよ~。(コロコロ)達成値14だね~。


GM は、了解です。では飛び石たちが毒霧に苦しんでいます。だ、ダメージお願いします……(震え声)


ユイ エリア攻撃ができるけど、威力は10なんだよね~。(コロコロ)ん、出目5だから2点、固定値が7だから合計9点の毒ダメージ。


GM はい、飛び石は魔物でした……それじゃあ改めて戦闘に入ろっか……。


ルジェ GM、涙を拭いてくだサイ。


 この後、魔物知識判定の出目が悪く魔物の弱点こそ抜けなかったものの、ユイの【ヴェノムブレス】、ルジェの【ライトニング】、サイネの【魔法拡大:数】による炎属性の魔法……【ファイアボルト】で飛び石たち、もとい、ステッピングリーフは哀れにも蹂躙されてしまった。


 おかしいなぁ……。こんなはずじゃなかったんだけどなぁ……。


 そんなGMの悲しみがありつつも、一行は無事にフレジア森林国にたどり着くことができたのだった。


GM キミたちは無事にフレジア森林国にたどり着くことができたよ。ただ、フレジア森林国、どうにも空気がピリピリしているね。入り口には検問が出来ていて、けっこう厳しくチェックされているみたい。


サイネ ちなみにGM……私が暮らしていた頃……今から1年前もこうだった?


GM いや、サイネが暮らしていた頃は少し閉鎖的なところはあるけどここまで酷くはなかったかな。


リーゼ 「サザンさん、何か心当たりはありませんこと?」と聞いてみますけれど。


GM サザンも困惑気味だね。「申し訳ありません、何が何やら……」という感じ。ただ、こうも続けるよ。


サザン 「事前にフレジア森林国にはスイートピーの受け入れ願いを出しています……この通行証を見せれば問題なく通るはずです」


リーゼ あら、いいですわね。


サイネ 有能……少し評価を上方修正……。


 ちなみに、本来はサザンがついて来ることはなく、また、サザンが通行証を冒険者たちに渡し忘れたことでここでひと悶着が起きる……という予定だった。


 改めて思い返すと最初の予定ではサザンが残念キャラすぎたので、この方針転換は正解だったと思う。


GM で、キミたちが検問所に近づいていくと、んー、これはサイネかな。サイネ、1D6を振って。その出目が奇数だったら検問所の衛兵はキミのことを知っているし、偶数だと知らない。


サイネ なるほど……(コロコロ)ん、3だからその衛兵は私を知っている……。


GM オッケー。そしたら衛兵はキミたち、いや、サイネの姿を見てこう言うかな。「サ、サイネ様……!」


サイネ あぁ……たまらない、この感覚……(恍惚)


 PLが本当にうれしそうな声を出しているのがおもしろい。どんだけマウントを取りたいんだと思っていたが、もしかしたら仕事のストレスで疲れているのかもしれない。


サイネ 「お前は……ふむ、顔を見たことがある……。たしか、ジョシュアだったか……」


GM じゃあジョシュアということになりました。「は、はい、ジョシュアでございます! お久しゅうございます! それで、本日は一体どのような……」


サイネ かくかくしかじか。


GM まるまるうまうま、と。はい、じゃあサイネの説明を聞いたジョシュアはあなたの後ろにいるほかの冒険者たちを見たあと、「あのサイネ様がこんなにも強そうな仲間に恵まれて……うっ」みたいな感じで泣きそうになるね。


サイネ 納得がいかない……。


GM で、サザンとスイートピーのほうを見て、「証明書をチェックします。……はい、間違いないですね。どうぞ、お通りください」と、キミたちに告げるよ。


ルジェ せっかく友好的なNPCなのデスから、何があったのか事情を聞いてみたいデスね。


ユイ そうだね~。サイネちゃん、聞いてもらってもいい~?


サイネ わかった……。「ところで……この厳重な警戒態勢は……?」


ジョシュア 「じつは、最近このあたりでメリアミスルトゥが発見されたのです……」


ユイ あー、うんうん。やっぱりそういうことか~。このレベル帯でメリアが軸のシナリオなら、メリアミスルトゥあたりが出てくるかなーと思ってたんだよね~。


 ちなみに、メリアミスルトゥとはメリアを優先的に狙う植物系の魔物で、メリアにとっての天敵とされている。メリア以外の人間や蛮族にとっても危険な存在で、発見されたら大規模な討伐作戦が組まれることも珍しくない。


ユイ 【着床】の攻撃がけっこう抵抗の目標値高いんだよね~。もしスイートピーちゃんたちを守りながら戦う必要があるとすると、けっこうキツイかも~。


GM ジョシュアはさらに言葉を続けるね。「そのメリアミスルトゥ自体は討伐されたのですが、このあたりで見つかる蛮族の数も増えていますし、そういった事情もあって警戒態勢を取っているのです」


ユイ あらら、討伐されてたか~。


GM ん、じつは最初はメリアミスルトゥを出すつもりでシナリオ考えていたんだけどね。破棄になったそのプロットの名残だったりする。


ルジェ 【着床】……デスか。なんだか怪しい響きデスね。


ユイ わっかる~。薄い本が厚くなりそうだよね~。


サイネ こくこく……。


リーゼ くだらないことを言ってないでさっさとシナリオを進めますわよ!!


 と、そんなリーゼの一喝とともに場面はフレジア森林国内へと移る。……ちなみに、ちゃんとリーゼの人はキャラ立ち絵の表情を頬染め怒り差分に変えていたので、芸が細かいなぁと思わず関心してしまった。

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