面白い依頼

とうとうやって来たぞ………依頼の日が!!


俺は布団からすばやく起き上がった。

そして、早速自分の姿を変える。……だいたい18歳くらいで良いかな。

6歳くらいでも結構な身長差があるな。……頭打たないようにしよ。


鏡魔法で自分の姿を見てみると少しだけ寝癖が付いていた。

いつもはそのまま無視して出掛けるところだが、今日は折角なのである程度整えてから家を出よう。



さてと、これで良いかな。

もう一度鏡魔法で全身を見る。……うん。良い感じだな。

よし、そろそろ集合場所に行くかな。


こうして俺は家を出たのだった。



◇■◇



「………初めましてだな。私は……ルーク、とでも名乗っておこうか。今日は宜しく頼む。」

「初めまして、ラドだ。こちらこそ宜しく頼む。」

ああ……俺の偽名は増えていく一方だな…………

何故だろう。……取り敢えずこれ以上増やさない様にしよう。


「では出発しようか。」

そう言ってルークは馬車に乗る。


そう、俺が受けた依頼は、護衛依頼だった。

名前からお察しの通り王太子ルークストリアだ。

な? 面白そうだろ?


「なあ、」

ルークに声を掛ける。


「ん、何だ?」


「お前、護衛必要ないないだろ。」

ルークに向かって言う。


この前したレベル上げが少しは役立つと思うのだが……


「それは、父上が無理矢理…… その辺の雑魚は余裕で倒せるって言ったんだが……聞く耳を持たずにギルドに依頼したんだよな………」

ルークはこめかみを押さえながら溜息を吐く。


「あ——…なるほどね……」

過保護だな、この国の王は。


こんな感じの雑談していると、結構な時間が経っていた。


「……ははは、それはないって。」

この姿でも仲良くなれた様だ。


「で、リリノにS級以上のダンジョンへ連れてかれて、 「頑張って倒してねー」みたいな事言って放り出されたんだよ。」

——…ただし、俺の話で。

俺は内心、とても複雑な気持ちである。


「………。大丈夫だったのか?」

「ああ、ギリギリ、なんとか。で、今のレベルは10012。当時の50Lvから爆速で上がった。もうレベル上げ(をやらなくて)良くない?ってくらいレベル上げをさせられた。もうレベル上げは懲り懲りだ。」

何故だろう。今すっごくルークの顔面をぶん殴りたくなるの………

思いっきり殴って良いかな?

………いや、ここで殴ったら正体バレる上にルークが木っ端微塵に粉砕されるぞ。治すの大変だし、一部(殴られた時の記憶)の記憶消去も面倒くさい。…………うん、止めておこう。


ギリギリ理性が勝った。良かったな、ルーク。命拾いしたぞ。



そんな事を考えていたら、馬車が急に止まった。

何事かと思い、探知魔法を使ってみる。

……盗賊っぽいな。しかも超弱い。軽く相手をしただけであっさりと崩れ去るほど。


……仕方ない。殺すのは本意ではないし、眠らせるだけでいいかな。まあ、本音は面倒だからあんまり動きたくないだけである。

ノア時代の頃、襲って来た盗賊を殲滅した事があった。そしてその後、ギルドが騒ぎ出し、俺をAランクに昇格させた。当時、ギルドに入りたてだったので、Fラン冒険者だったが、一気にAラン冒険者に昇格した。後で聞いたのだが、その盗賊はかなりの強者だったらしいのだ。

それからと言うものの、指名依頼がポツポツと増えて行き、評判を聞いた奴等が次々と指名依頼を俺に寄越して来やがった。俺のっ!休みはっ!何処行ったんだよッ!!

……と、言う訳で。


俺は馬車から降り、ルーク達だけを除外して【睡眠状態スリープ】を使った。

盗賊達が倒れた音がした。


いや——…楽だな楽だな。状態異常の魔法って使うと楽だよね〜〜

あ、しまった。調子に乗って持続時間を5時間にしてしまった。………まあいっか。


「もう終わったのか。」

ルークは馬車から降り、こちらへ向かって来た。

「ああ。……ただ眠らせただけだ。あと、魔法の持続時間は5時間だから、それ以内に縛るなり連行するなりしないと逃げ出すだろう。」

地面には100人近くもの盗賊が転がっている。それを見たルークはこう言った。


「…………手伝おうか?」

「……そうしてくれると助かる。」




その後、約1時間ずっと盗賊を縄で縛っていた。俺、こういう作業は嫌いなんだよな……

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