謁見の日・2

ああ、久し振りだな……


――…入口から王城に入るの。

え、アークに会う時入口から入ってたんじゃ無いの、だって?

冗談はよしてくれ。入口から入ってたわけ無いじゃん。

もちろん、転移不法侵入してたよ!

アークに許可貰ってたから逮捕とかは無かった。


「開門!」

門番の人が声を揃えて言う。


必要あるか?これ。

そう思ったが、いちいち突っ込んでいたらキリが無い。そういうものだと自己完結する。

「サイメル、リリノを客間に案内してくれ。私は父上に報告に行く。」

「――は。……リリノ殿、付いて来てください。」

そう言って護衛の人――サイメルが歩き出した。

俺も少し遅れて歩き出した。



所変わって客間。


――何をすればいいのだろうか?


俺はガチガチに固まっていた。

緊張するというのはこの事だろうか?

緊張? 初代皇帝アークスノウに散々あれこれ言っていた俺が今さら無いをいうんだ、と思った。が、緊張の原因は心当たりしか無い。

そう、前世の俺――浬緒だ。

浬緒は学校でボッチを貫いていた。友達はゼロ。強いて言うなら、ゲーム機が友達……かな?(キリッ)


……自分で言ってて悲しくなってきた。

そして最後の(キリッ)、必要無くね?

友達…しかもゲーム機……人間ですら無いな。

自虐発言は止めとけ、前世の俺浬緒よ。どうにもならなそうなら一部記憶を消す事は出来るからいつでも言ってくれ。


ちなみに、今の浬緒は並列意思みたいな……多重人格? 何か違う気がする。……まあいい、浬緒は別の人格という認識で良いと思う。

ついでに言うと、リーナリアの人格はずっと寝ている。

今の俺はノアの人格がフル稼働している状態で、たまに浬緒が割り込んできている、と言ったら良いかな。

もしかしたらノアの人格と浬緒の人格が混ざってるかもしれない。

多分、これが今の俺リリノの人格だ。


あれ、最初は何の話していたのだろうか。すごく話が脱線している気がする。

ああ、そうだ。緊張しているとか何とか言ってたな。


脳内で「万年ボッチの俺には無理だ。後は任せた」と浬緒(の人格)が言って、奥へ引っ込んだ。

あ、おい!

声を出したが、時既に遅し。

精神世界の繋がりが閉ざされてしまった。

という事で、精神世界で俺一人になってしまった。その瞬間、ノアがリリノの上からズドンと割り込んで来て、体を乗っ取られてしまった。

この非常識の塊とも言える奴が何をやらかすか分からない。だが、これだけは言えた。

絶対にやらかすぞ此奴。

誰か来る前に体を取り返さねば。

どうやら、ノアはアークの子孫に会うのが楽しみで楽しみで仕方が無いらしい。ルークに会っているだろうと思えば、それはカウントしないとか言ってきた。

そこで初めて自覚した。

ノアうざい、鬱陶しい、面倒くさい。

何でこんな性格になったのだろうか?

理由は分からない。分かるわけない。

という事で、考えるだけ無駄だ。

それよりまずは、体の主導権を奪還するのが先だ。

最初は正面から返せと言ってみた。

「え、それで返すわけ無いだろ。

 それで素直に返されたら世の中戦争は無いだろうに。」

嗚呼うざい、いや確かに正論だけれども? その返し方は無いでしょ。うん。

あと、非常識の塊ノアを野放しにしていると俺の首と胴体が永遠の別れを告げるんだけど。何、君。自殺願望とかあるの?

「いや、首と胴体は永遠の別れを告げる事は出来ない。寧ろ、さようならのsすら言わせずにこれからもよろしくするんだけど。(要約:一瞬で元に戻る)」

首と胴体がこれからもよろしくと挨拶を交わしたとしても、不敬罪でお尋ね者になるのは目に見えている。

あ〜あ。人類最強とも云われた英雄ノアともあろうお方が、短い時間も待てない心が狭い人だとは思わなかったな……


言っていて心が痛む。

俺、人格の半分くらい此奴だから巨大な言葉のブーメランがこっちに向かってきた。

サクゥッッと綺麗に刺さる。

向こうも同じくサクゥッッと言葉の刃が急所に刺さる。

「かはっ………――す、み……ません、でした……」

相討ち、か………


そして、体の主導権を再び握る事が出来た。


後は……頼、



そして、リリノは倒れた。

リーナリアは寝ている。なので、消去法で浬緒が体の主導権を握る事となった。

浬緒の犠牲は忘れないぞ……!






後日、「金輪際こういうのに関わらせんな!!」と、浬緒万年ボッチに怒鳴られたのだった。

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