用件
「――で、用件は?」
「お前の正体を隠してこの前の件を父上に報告した。」
この前の件とは、ソウが暴走していた時の事だろう。
「で、反応は?」
「父上は『余の元に連れてくるがよい。』と言っておられた。」
ふむ、なるほどな。
「拒否権は?」
「ほぼ無い。」
マジか…… 面倒くさ………権力って何であるんだろうな……
「日時は?」
「明後日、午後4時から。」
「……分かった、空けておく。」
「……意外とすんなり了承するんだな………」
「どうせ断っても無駄だろう?」
「その通りだな。」
――あ。
「着て行く服、どうしようか。」
「そのままで良いんじゃない?」
よかった――…
俺は心の底からホッとした。
ノア時代に国王に謁見した事が何回かあった。そして、それらは全て、堅苦しい上、面倒くさいとしか言いようが無いほど、どうでもいい経験だ。
「――よし、お前等! レベル上げをしよう!」
「いや、俺は55レベルだかr…」
「は⁉︎ 55レベル? 少なっ!」
俺はルークの言葉を遮る。
少ない。あまりにも少ない。俺の100億分の1以下だよな。
「そう言うリリノはどうなんだ?」
ルークに訊かれる。
「Lv.59373938468。」
「何その出鱈目な数字。何をしたんだ……」
「アビス大迷宮行って来た。」
「アビス大迷宮っ⁉︎⁉︎」
「別名、帰らずの迷宮。調査隊を送って、誰一人として帰って来なかった」
ウィルがすかさず説明を言う。
帰らずの迷宮って………物騒だな⁉︎
「もしかしたら人の骨を見たかも知れない。」
少し前の記憶をたぐり寄せる。
「えっ 何処で?」
「たしか――…」
「――…入り口のとこだ。」
「もしかしたら二層まで行ってるかも知れないと思った俺が悪かった……」
あ、いい事思いついた。
ふっふっふ………
「もう一回言うけど、レベルが超低い君達にレベル上げをしてもらおうと思いまして。ここに安心安全なレベル上げ方法がここにある。もし、お前等が嫌がったとしても問答無用で連れて行く。拒否権は皆無だ。」
ウィルは露骨に嫌そうな顔をする。
「まあ良いんじゃない?」
「はぁ…… ルークがそう言うなら。」
よし、言質は取ったぞ。
「早速行こうか。」
「えっと……何処に行くのかな?
「アビス大迷宮。」
「えっ さっき 安心安全 って言ってたよね?」
「大丈夫。俺がいる限り安全だし、今回
満面の笑みを浮かべて言う。
ウィルは絶句し、ルークはというと、もうどうにでもなれとアビス大迷宮に関しての思考を棄てたようだ。
「は、はは………」
部屋には誰かの枯れた笑いが響いていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます