アビス大迷宮・3
「……元、人類最強………?」
暗殺者が言う。
自分で言ってて思ったんだが、これ厨二っぽい。
なんか嫌だから今度から言わないでおこう。
「お前、どうしてここにいるんだ? ここには入れない筈だが。」
転移魔法を使わない限り、だが。
入り口無いもんな、この迷宮。
「……転移させられたんだ。」
転移――
一体誰に?
もしかして…
こんなことをする奴は1人しかいない。
「もしかして、遊戯神か?」
「何故分かった? もしや、お前も――」
――奴の仲間か? と訊きたいのだろう。
「それは誤解だ。
サナルアの脳内で、だがな。
他は知らん。神界はまだ行ったことがないからな。
「お前は何者だ」
「だから、言ったよね? 俺は元・人類最強で、今はただのリリノだって。聞いてた?」
「聞いている。その、人類最強とやら呼ばれていた時の名を訊いている。」
…………そっちかよ。
「――ノアだ。お前の名前は?」
まさか、言わないということはないだろうな………?
「
名前的に日本人だな。
「お前はどうしてここにいるんだ?」
言いたい事とは少し違う言葉が口から漏れ出た。
「ああ。話すと長くなるんだが――…」
コウセイは何が起こったかを話し出す。
◇■◇
ヒュゥッッ―――――ゴッ‼︎
最後に聞こえたのはこの音だった。
そして、気が付くと俺は白い空間にいた。
「――やあ。こんにちは」
目の前には少年がいる。
「こ、こんにちは……?」
反射的に挨拶をする。
「ゴメンねぇ… ボクの都合で死んじゃって……」
少し悲しそうな笑みを浮かべ、少年が謝ってきた。
「それはどういう――…」
わけがわからない。
突然現れて死んだとか言われ、俺の頭は混乱していた。
「その代わり――と言ってはひどいと思うけど、ヴィラントっていう世界で第二の人生を謳歌してね。」
先程の悲しそうな笑みが無かったかのように、パッと悲しい様子は消えた。
だんだん状況が理解できてきた気がする。
俺は――…死んだ?
死んだのか?
「ボクは遊戯神トディアト。比較的、安全な所に転移させてあげるね。じゃ」
その言葉を聞いた途端に、俺の視界から少年はいなくなり、白い空間も消え去った。
気付いたら俺は、アビス大迷宮の最深淵近層であった。
暗い……
《スキル、【暗視】を獲得しました。》
うわっ!
ビビった――…
あの神の、せめてもの償いとして、だろうか。スキル獲得が早い。
スキルを獲得したものの、暗くて周りが見えない。
《スキル、【暗視】がLv.5になりました。》
まだ周りがはっきり見えない。
《スキル、【暗視】がLv11になりました。》
ここまで来てやっと、薄暗いが周りの景色が見えてきた。
ここは――…洞窟?
《スキル、【鑑定】を獲得しました。》
《スキル、【暗視】がLv20になりました。》
後ろに何かいる気がする。
《スキル、【気配察知】を獲得しました。》
このスキルを獲得した途端に、それは確信に変わった。
振り向いて、後ろを見る。
すると、なんということだ。
後ろには竜みたいなのがいた。
「〜〜〜っ⁉︎」
一体どこが安全なんだよ⁉︎⁉︎
心の中で叫ぶ。
不幸中の幸い、竜(?)は寝ているようで、俺にはまだ気づいていないようだ。
気付いたら獲得していたスキル、【鑑定】で目の前にいる竜(?)を鑑定する。
――――――――――――――――――
HP:8394739839
MP:5046398399
――――――――――――――――――
――…はぁっ!?!?!? 何コレ桁が違いすぎるだろ!?!?
もうここ絶対に安全じゃねぇだろ‼︎‼︎
………
……
…
俺はふと考える。
誰にも気付かれずに一瞬で戦い終われたらいいのに……
と。
《コウセイ・クラハシの
え?
《スキル、【気配遮断】を獲得。》
《スキル、【気配察知】を獲得。》
《既に、【気配察知】を獲得していた為、【気配察知】が統合され、【気配察知Lv.2】に変更されました。》
《スキル、【暗視】を獲得しました。》
《既に、【暗視Lv.20】を獲得していた為、【暗視】が統合され、【暗視Lv.21】変更されました。》
《スキル、【無音】を獲得。》
《スキル、【毒合成】を獲得しました。》
《スキル、【操糸】を獲得しました。》
《スキル、【
《スキル、【短剣術】を獲得しました。》
《スキル、【付与魔法】を獲得しました。》
《スキル、【影支配】を獲得しました。》
《スキル、【収納】を獲得しました。
ビックリし過ぎて声すら出ない。
2つ3つ位スキル獲得するだろうなとは思ったけど、こんな事ってある? 普通。
ないよね⁉︎
まさか、10くらいのスキルを獲得できると思ってなかった。
このスキルで、なんとかなるかな……?
不安だったが、気付かれる前にやった方がマシだと腹を括って、緋龍に挑んだ。
【操糸】で糸を身体に巻き付けて身体強化の代わりにする。
これである程度は動けるだろう。
【無音】を使って音が出ないようにしよう。
【
【毒合成】で、ほぼ即死の超猛毒、念の為に強酸性毒、麻痺毒を短剣に纏わせる。
そして、【影支配】で緋龍の背後移動する。
極め付けは――…【短剣術】と【操糸】を駆使し、緋龍の首を斬るッ‼︎
ギィィィィィィン!!!!
流石に無理か……。
予想していた通り、刃が通らない。
だが、強酸性毒は効いている!
という事は、だ。
こいつに、ありったけの強酸性毒をぶっかければ緋龍を倒せるかもしれない。
【毒合成】で強酸性毒を緋龍にかける。
すると、ジュゥゥゥ………と音を立てて溶け……っておいおいおい‼︎
見えたのはかなりグロくてエグいヤツだ。
人生で初めて、モザイクの有り難さを心の底から感じながら虹を大量生産していたのだった――
今までこの戦法で何とかやって来た。
◇■◇
「――…と、なんだかんだで最下層までやって来れたんだ。」
「よかったな。生きて来れて。」
「ああ。最弱の魔物のスライムが恋しくなってきたよ……」
涙ぐみながら、コウセイが言う。
少し、しんみりした空気が流れる中、誰かさんの空気を読まない腹が鳴った。
ぐうぅぅぅ……
「あっ。」
「飯作ろうか?」
「………美味いのを頼む。」
「期待はするなよ。」
そう言って俺は調理器具と食材を【
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