アビス大迷宮・1

「と、いうのは冗談で。久し振り、ノア」

俺が触ろうとしていた剣はレイヅキの手元に向かった。

「久し振り、レイヅキ。」

「俺にとっては250億年くらい会ってないね。」

「お前、どんだけ生きてんの?」

本当に。何が起こった?


「ここ数億年は何も起こってない。」

神王ラル・キングって何?」

とりあえず訊いた。


「あ――…。上から二番目の位……か?」


「サナルアの話は本当だったんだな…… って、あれ、ここどこ?」

いつの間に転移したのだろうか。

「草がそこら中に生えているんだけど?」

なんか、ヤバそうな物も混じっている気がする。


「ここはハルマリナ・セイディーン。さっきまで俺がいた場所だ。














ま、それから色々な事がありまして。

もとの世界帰ってきたわ。

帰りはレイヅキが転移魔法で送ってくれた為、楽だった。

体感時間はたったの数時間だったが、帰ってきたら4日経ってた。


やばいやばい。

集合は今日の朝じゃなかったっけ?

こんなに時間軸が違うとは思ってなかった。

早く行かないと。


そう思い、集合場所の山に転移した。


「ノア、遅かったのう」

『めずらしーね。いつも時間通りに来るのに。もう昼だよ。』

もう既にリホとエンが山で待機していた。


「悪ぃーな、思ったよりも時間軸が違ってた。あと、魔法の創造に時間がかかったんだよ。」


『あれ、レイヅキは? もしかして、見つけられなかったの?』

「いや、違う。訊いてみたんだけどな……」

先程の事を思い出しながら話す。



ハルマリナ・セイディーンにて


『もう一回パーティーに来てくれって?』

レイヅキが言う。

俺はレイヅキの言葉に頷く。

『ああ。まあ、来てくれると嬉しいな、程度だけど。

『…… やめておく。俺はこの世界を調整とかしないといけないし、仕事もあるからな』

暫く考えてから、答えを出した。

『そうか。』



「――って感じで断られた。」


「い、意外とバッサリ断られたな。」

《バッサリと☆》

気付いたらセレも加わってた。……ついでにシラタマも。


〔レイヅキ様の正体を知ったら現実逃避したくなるよね。〕


 えっ、サナルア!?」

心臓止まるかと思った。

〔ねぇ、私を誰だと思ってる?〕

何処からともなく声が聞こえてくる。

いや、脳に直接……か?


「あ―――……えっと。」

〔そこはちゃんと言おうよ!〕



…………


………


……



〔えーゴホン。アビス大迷宮に行ってくんない?〕

アビス大迷宮? 聞いたことがないな。


〔日本語訳:深淵大迷宮。とりあえず、深いし大きい迷宮ってことだね。〕

なるほど。で?

〔アビス大迷宮に、最下層より下にある最深淵近層……最も深遠に近い層があるんだけど。〕

うんうん。

〔そこに行って、湧き過ぎた魔物を狩って欲しい。やってくれるかな?〕

オッケー。こっちにも利があるからな。

主にレベル上げとか、レベル上げとか、レベル上げとか。

〔じゃまた今度ー〕


最深淵近層か…… 長いな。

なんか、強い魔物が出てきそう。

レベル上げに打って付けだな。


「アビス大迷宮に行こうと思う。」

「アビス大迷宮? 随分と昔の迷宮じゃのう。確か、創世からあると禁書とされた文献には書いてあったはずじゃ。」

リホが言う。

『よく禁書を読もうと思ったね。』

俺はエンに同意する。


「妾が禁書に指定したからのう。」

「あ――… そういえば、リホは女帝だったか?」

「随分と昔の話じゃのう。」

セレの言葉にしみじみしているリホ。


《はなしがだっせんしまくってるね☆》

「お前にゃ言われたかねぇよ。」

《そんなことしったこっちゃねぇ、だね☆》

俺はこの会話から、白玉が何かどうでもいいことを言っているならば、スルーをすることに決めたのだった。


「よし、ってあれ? ソウは?」

張り切ったは良いが、ソウが見当たらない。


「ここだよー」

背後から声が聞こえる。

振り返ってみると、剣が刺さっていた。

「この状態で持っていってくれると嬉し……」

「もう行くぞ。方角はあっちだ。」

そう言って俺は南東に歩きだす。

ソウはもうスルーで。


「えっ、ちょ、えっっ!? 待って待って! 冗談だって。ちゃんと自分の足で行くから!」

《ど……「お主が発言したら語尾に必ず“☆”が付くじゃろう?」

シラタマの言葉を遮った。

『あの言葉に“☆”が付いたら心が砕かれるね。ついでに、肩にポンと手を載せながら言うと相手を苛つかせることができるね……』

《こんかいはやめておくよ☆》

って……。


『できれば次回もね。』

《いちおうかんがえておくね☆》


「そろそろ行くぞ……?」

話が脱線し過ぎだ。


『よし、張り切っていこー!!』

「そうっスね! 頑張ろ!」

《おー☆》

声を上げたのは三人だけで、他四人は生暖かい目で三人を見守っていた。



話が一段落ついた(と思う)ので、俺は少し、歩くペースを上げた。

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