前日譚の前日

さて、王太子ルークストリアの前日譚は終わった。

そして今度は次期ウィルスラント公爵家当主、ヴィオル・フォン・ウィルスラントの前日譚。

彼もまた、冒険者登録に来るのだ。

何故だろう、主な攻略対象は全員冒険者登録しに来るのだ。運営さん、まさかこれに裏がないと言わないよな?


まあ、ヴィオルくんの前日譚まであと一ヶ月くらいあるからしばらくはこの話は保留しておこう。



で、俺はこれから異世界転生の小説で出てくるテンプレ展開、教会で祈っていたら謎空間に意識だけ飛ばされてその先に神様がいた、というテンプレ展開が俺の場合あるのか、試しに行こうと思う。

俺の予想だと、多分ある。




教会についた。

いや、懐かしいな。まだ残ってたんだな、この――分身体。……ああ、分身体? そうさノア時代の時に造った分身体だよ。


『あ、久しぶりです。』


【念話】で話してきた。


『久しぶり。』

『今までどこにいたんです? 突然魔力回路の繋がりが途切れましたけど。』

『そのことなんだがな、転生してきた。二回ほど。』

『はぁ? 二回?一回じゃなくて?』

『ああ、一回目は故意でやったんだけどねぇ。転生したはいいけど、記憶が引き継がれなかったみたいで。転生した世界は“地球”と言ってね、いたって平和な世界だったよ。魔力がない分、魔物もいないし。そんな世界地球の異世界転生小説に出てくるテンプレ展開――トラックに轢かれて死んだ。んで、元の世界に戻ってきたわけさ。極めつけは乙女ゲーの転生。テンプレ重なりすぎ。』

『テンプレとは?』

『テンプレートの略』

『???』

『……いや、気にしないでくれると助かるな』

『あっ、はい。』

『そういえば俺、ここに用事があるんだ。また後で話そうぜ』

そう言って俺はこの場を去った。



へぇ……この建物、意外としっかりしてるんだな。


そう考えていたら、もう礼拝堂?についた。

目の前には神像みたいなのがある。

俺は祈る体制をとった。(目をつむって手を組んだだけだが。)

目をつむったのにもかかわらず、視界に光が見える。


うん。あのテンプレ展開は健在だ。


〔ほぅ……人がここに来るとはこれはまた、珍し………い……? ……その気配は………ノアか。〕


「やあやあ、また来てやったぜ。今回は言いたい事がすごくあるんだ。聞いてくれるかな、サナルア様?」

俺は視界に映っている神、サナルアに言った。

サナルアは、白い絹の様な髪にアクアマリンのような澄んだ眼という整った容姿をしている。


〔すごく上から目線だな。私は神なんだが…〕

「ま、いいじゃんいいじゃん。」

〔……。〕

「でさ。言いたい事があるって言ったよな。何で俺を? 二回目の転生ってサナルアの所為だよな。」

〔……その力を消滅させるのは勿体無いであろう?〕

「ま、確かにそうだがな。せめて、一言断りを入れてからしろよな。」

〔次があればそうするとしよう。そんな事が起こることはないだろうが。〕

「うん。それは正論だな… で、話が変わるのだが、なんで乙女ゲーの世界になったんだ?」

地球のあの遊戯神がこの前遊びに来た。どうやらこの世界の事を気に入ったらしい。で、気付いたらこうなってた。〕

「おう、それは……御愁傷様だな。遊戯神あれを止めるにはあれより高位の存在でないときついだろうな」


〔ああ。遊戯神あれの対処は大変だった。〕

そう言って溜息をついた。


〔あの時、二度とくんな!って言いそうに……いや、〘さっさと滅びろクソ害悪遊戯神!そして、消滅、壊滅、……―――



十分後。



破滅への階段を上りやがれ!!〙って言いたかったな〕

そんなことを笑顔で言われた。



「……長いわ。…あとキャラ変わってる。」

〔そうか?〕

「そうだ。」


〔…………。〕

〔………。〕

〔……。〕


沈黙が続く。

そのまま沈黙が続くと時間が勿体無いのでそろそろ切り上げることにした。


「じゃ、そろそろ帰るわ。」

〔……。〕


返事が返って来ない。…別に来なくていいけど。


視界?から白い空間が消え去った。そして、視界は黒い。

そんなことから白い空間から帰ったということを確信する。


よし、帰るか。あの(ダンジョンと化してしまった)家(失笑)に。


正直思うんだけどさ。あれはやりすぎた。本当にやりすぎた。

何回も繰り返してるけどさ。

やりすぎた。

今の時代の人ならもう、絶対に攻略できないダンジョンか何かになってしまっている。

大事な事なのでもう一度繰り返す。

あれはやりすぎた。


次からはほどほどにしよう。

次があるかは分からないけどね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る