昇格試験

はい、おはようございまーす。

今日は乙女ゲー前日譚(王太子殿下)+昇格試験の日でーす。

さて、ギルドに行くとするか。



………………。

やばい、完全に忘れてた。



これ、どうやって出たらいいんだ!?


俺、バカだ。

なぜ自分で作った家から出られないんだ?

「いや、普通に出られるじゃん」と思ったかもしれない。

ああ、そうとも。出られるよ!

だが、よくよく考えてみろ。

1.普通に家から出る。→出た先に人がいた。→「どこから出たんだ」となる。→色々と騒ぎが起こる。→結果、何事もなく冒険者ギルドに行くことはできない。

2.姿を消して家から出る。→人がいないところに……あ。


ごめん。あったわ。

お騒がせしました。


俺は脳内でスライディング土下座をした。


よし、出よう。


何事もなかったように透明化して家から出た。



人目がないところは、っと。あった。

気配なし、空間の歪みなし、仕掛けもなし。姿を表してもOKだな。

で、ここどこだ?

地図魔法で……あ、ここ、冒険者ギルドに近いな。あと、そろそろ王太子がギルドにつく頃だ。急がないとな。




冒険者ギルドの扉を開けた。

すると、そこにはもう王太子がいた。

銀髪にエメラルドグリーンの眼。うん、この国の王太子がいるな。


「お前がそうか」

上から目線な言葉を掛けられた。

「何が?」

「ああ、俺と同じAランク昇格試験を受けに来た奴はお前か。」

言葉が足りなかったのに気付いた王太子は言い直した。

「そうだけど……お前誰? ちなみに俺はリリノ」

まあ、知ってるんだけど。

この質問に王太子は偽名を言うだろう。


「……ルーク。」

予想通りの答えが返ってきた。

「……珍しい名前だな。」


「その言葉、そっくりそのままお返しするぞ。もっと言えばお前の方が珍しい」


「あ、たしかに。」

たしかにそうだ。

適当につけた名前だが、よく考えたらすごい珍しい。

「あの、そろそろ昇格試験を始めようと思うのですが……」

受付の人が来た。


「「あ、はい。」」

見事にハモる。


「では、試験内容は―――」





「―――で、なぜこうなったんだ?」

ルークは剣を構えて言う。

「さあね。っていうか、こいつ倒せんの?」

「余裕。」

人類最強と云われた俺にこの程度のドラゴンごときを倒せなかったら逆におかしい。


「お前は?」

「ギリギリ倒せるか倒せないか、ってところかな。」

「馬鹿か?お前は。質問は失礼だな。お前は馬鹿だ。」

「ひどっ 2回言ったな、2回。あと僕は頭は良い方なんだけど。」

「ヘーソーナンデスネー で? それが?」

「………。」

先程の会談での大人びた口調や雰囲気はいったい何処に行ったのやら。


これ、そろそろ討伐し殺ったほうがいいんじゃない?」

「そうだね。リリノ、拘束頼む。」

「はいよ。【束縛鎖ジェイン】」

魔法名を唱えた瞬間、異空間から鎖が出てきてそして、竜を縛った。


それに続くようにルークが地面を蹴った。

「《参の型 刀斬炎舞》」

刀身に炎を纏い、竜の首を切った。


どこが倒せるか倒せないか、だよ。余裕で倒してるじゃん。



「で、この死体どうしたらいいのだろうか。……リリノ、空間収納魔法は使える?」

「使えるよ。竜の死体これをしまえって言うんだろ?」

「うん。そだよ?」

「だろうね、言うと思った。【空間収納ストレージ】」

竜(の死体)を時が止まった空間に収納した。


「よし、さっさと戻るぞ。」

「あ、そういえばリリノって転移魔法使えたりする? ……ま、流石にリリのでも――」

「使えるぞ?」

「ん?」

「使えるぞ?」

「は?」

「使えるぞ?」

「ワースゴーイ!デンセツノマホウヲツカエルナンテ―――」

理解が追いついてないようだ。

あれ、『デンセツノマホウヲツカエルナンテ』って言ったか?此奴。

『伝説の魔法を使えるなんて』?

おかしいな。

転移魔法は伝説の魔法でのなんでもないぞ?

だが…何故?

いや、もしかしたら前前世の俺、ノアがいた時代(約3000年前)の文化や知識、多くの魔法、技術が段々と廃れ、衰退してしまったのかもしれない。

もしかしたらそれが人為的に行われていたのかもしれない。そう思った根拠は、3000年前当時の魔術戦闘士は現代の人の数十倍強いからだ。そして、寿命はほぼ無いと言っていいだろう。魔術戦闘士は『見た目で年齢を判断するな』とよく言われていた。その理由は魔術で身体の年齢を操作することができるから。精神年齢も操作することは一応できるが操作した分、反動が重くなる。その事もあってか、あまりする人がいない。

そんな半永久的に生きれる魔術戦闘士が便利な魔術を後世に秘匿する……? いや、そもそも魔術なんて誰でも知っていたはずだ。何故その存在が伝説となっている?


ここまで考えてもういくつかのことが思いつく。

その1つがこれだ。


“当時の魔術戦闘士にも手に負えない大厄災が英雄ノアが転生した後に来た”


俺はもう少し後に転生した方が良かったかもしれない。……今更後悔しても仕方がない。前を向こう。

……3000年前の魔術戦闘士が一人もいないはずはない。転生魔法を使った人は一人ぐらいはいる筈だ。

魔力探知を使おう。

この事はまた後で考えるとしよう。



で、と。


「おーい、大丈夫か?」

「――…あ、ああ。大丈夫だ。」

「そろそろギルドに戻るぞ」

「転移魔法で?」

「そっちの方が早いな。転移魔法にしようか。」

「え、たしか文献によると転移魔法は魔力を大量消費すると書かれていた気が」

「たかが10000だろ? まだ魔力消費量少ない方じゃん。」

「えぇ……?」

どうやらルークは俺の常識を理解していないようだ。

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