冒険者編

元人類最強、冒険者になる。

俺は屋敷から暫く歩いたところまで来た。

あ、勿論、透明魔法を使ってるけどね。


そろそろ冒険者ギルドに着くな。って、俺まだ変身魔法使ってなかったわ……。

ギルドに着く前に気付かなかったら即、ばれてたところだ。


俺はバカだったのか?

いやいや、ない。それはない。

ないと言ってくれ。


とりあえず、変身魔法を発動する。


外見は、前前世の俺に似た、長い黒髪の少年だ。


長い髪……

少し邪魔だな。…切るのもめんどくさいし……結ぶか。

服はどうしよう。いま、女用の服を着ている。流石にいくら少年でもこれはアウトだろ。

あ、そうだ。前世でファンタジーのゲームとかに出てきた装備の1つ、ローブみたいなのとかどうだろうか?

あとは…それに合いそうなのでいっか。


何色がいいかな。

青が好きだから青系統の色にするか。


パチン、と指を鳴らすと今まで着ていた服がと今考えていた服に変わった。


これでよし。

これでばれる心配はない。……たぶん。

その時はその時だ。気にしなくていいだろう。


裏路地に入って、人がいないのを確認してから俺は透明魔法を解除した。


見られてたら大問題だよね、これ。


「おい、そういうところは危険だ。早く出ろ。」


うっわ。マジか。

見られてないよな!?


声の主の冒険者らしき男だ。

驚いた様子ではないので、見ていないだろう。もし、見ていたとすれば、それを見ても動じない高レベルの魔法…もしくは同じ魔法を使う人なら、驚いていないのも納得だ。

だが、こいつは剣を装備している。魔法戦闘員ではなく、特攻タイプの人だ。失礼だと思うが、こいつ、たぶん魔法を全く使えない人だわ。


うん。こいつは見ていない。


観察してわかったんだけどさ。この男、かなり強い。

魔法使えなくてこんだけ強いって、なんかすごい。


「おい、聞いてるのか?」


あ、すまん。忘れてた。


「いえ、少し迷ってしまって……」

無論、これは嘘だ。


「どこに行くんだ?出来るところは案内するが。」

親切に聞いてきた。


「いいんですか?ありがとうございます!」

ここは素直に乗っておいた方がいい。こうした方が怪しまれることは少ないだろう。


そして、俺達は冒険者ギルドの方へ向かって行く。


「冒険者登録をしに行くのか?」


「はい。そうですね。やっと12歳になったので……」


「憧れている人とかいるのか?……あ、着いたぞ。ここが冒険者ギルドだ。」


「ご案内、ありがとうございました。またどこかで会いましょう!」


そんな会話をしてしてから、俺はギルドに入った。



ギルドの中には依頼掲示板、受付、酒場…などがある。

そこら中に冒険者がいる。

逆に、いなかったら吃驚だ。


俺は、受付に行った。


まあ、まずは冒険者登録をしないとな。


「登録ですか?」

受付の人が聞いてきた。


「そうです。」


「では、職業ジョブと冒険者名をこの紙に書いてください。」

そう言って渡された、紙とペンを受け取った。


ふむ。職業ジョブか、なるほど。

これは……魔法戦闘士でいいか。

リーナリア…ノア…浬緒……うーむ。

どうしようか?

じゃあ、適当に頭の文字を取ってきて、と。リ、ノ、リを入れ替えて…リリノでいっか。

これでよし。


「書き終わりました。」


「はい。ギルドカード発行まで時間がかかりますので、しばらくお待ちください。」


「あ、掲示板を見ていてもいいですか?」

受付にそう尋ねる。

「いいですよ。」

あっさりと許可が出た。


「ありがとうございます。」

俺は早速、掲示板を見に行った。



ウルツノネズミ 30匹討伐

Eランク

報酬:360ミール

依頼者:冒険者ギルド


アールディボア

Bランク

報酬:1000ミール

依頼者:ノーフォ領 領主


スライム 10体討伐

Fランク

報酬:100ミール

依頼者:冒険者ギルド

常注依頼


モンスターの討伐依頼は大体こんな感じだ。討伐以外の依頼はゴミ処理など、雑用依頼である。


残念ながら俺は、ちまちまとランクランク上げに勤しむ忍耐力はない。

なので、初っ端からランクアップする為、試験を受けようと思う。


元人類最強ですからご心配なさらずとも合格しますよ。


「リリノさん、ギルドカード発行が終わりました。受け取りに来てください。」


呼ばれたので先ほどいた受付に戻る。


「これがギルドカードです。身分証としても使えます。無くさないよう、大事にしてください。無くしてしまったら、再発行にはお金がかかりますのでその点はご注意を。ランクアップについてはまたその都度、説明します。」


「——さっそくだけど、ランクアップの試験を受けたいんだけど。いくら払えばいい?」


「500ミールです。」

あ、意外と少ない。


「これで合ってるかな?」

そう言って、大銅貨5枚を机に置いた。


「はい。では、Eランク、Dランク、どちらの昇格試験を受けますか?」


「どちらでもない。Aランクだ。」


「……流石にこの私でも動じますよ。それは。やめておきなさい。」


「……俺のステータスを見てみるか?」


「は?」

受付の人が間抜けな声を漏らした。


「リリノさんその意味をわかっ…」

「知っています。」

即答した。


「ステータスは最後の切り札。それくらいは俺でも知ってます。けど…どうせ、わかりませんから。どうぞ、鑑定してください。」

そう言って俺は笑った。


「後悔しても…知りませんからね。【鑑定】」


「っ………⁉︎」

受付の人は言葉を失った。


そう、のだ。


彼——受付の人の視界にはこんな文字が浮かびあがった。


《鑑定不可》


彼の実力を以ってしても、鑑定できなかった。

受付の人は、元Sランク冒険者だ。

その事実はこういう事を意味した。


この少年は元Sランク冒険者をも上回る実力を持っている、と。





色々あったが、ひとまず昇格試験を受けられるようになったのでよしとしよう。

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