お月見どろぼう 長月

 こんばんは。NNNニュースの時間です。

 今夜は、中秋の名月。今日も、季節のお菓子の話題からです。



 お月見といえば、欠かせないのが、お月見だんご。

 本日も、猫のお菓子屋さんに、中継が出ています。


 レポーターは、猫のお菓子屋さんの開店初日にお当番だった三毛猫のミケさんに、お願いしてあります。

(・_・).。oO(ほっ。ツッコミ上等のしましま三毛猫のコミさんではなくて良かった)


 レポーターのミケさん、お店のようすは、どうですか?

 レポーターのミケさん?

 おや? 七夕たなばたのときのコミさんと同じく、ミケさんの姿が見えませんね?

 

 ミケさん? どこにいるんですか?

 中継、始まっていますよ!

 ミケさん?

 どうしたんでしょう、困りましたね。

 また、配達とか行って、ミケさんもスタジオに現れるんじゃないでしょうね。


(・_・).。oO(スタッフには、ミケさんがスタジオに来ても、ぜったいに入れるなと言い渡してあるから、だいじょうぶだと思うが……。二度と、三毛猫さんに、わたしの仕事を取られてなるものか)


 ミケレポーターがいないようなので、いったん、中継を中断して、次の話題に……。



ミケ「今、猫のお菓子屋さんに、どろぼうが来ました」



 わっ! 驚いた!

 ミケさん、今まで、どこに隠れていたんですか!

 中継が始まったら、ちゃんとカメラの前にいてくださ—— えっ! どろぼう?!

 猫のお菓子屋さんに、どろぼうですか!?

 聞き捨てならない! 事件じゃないですか!



ミケ「しーっ! 大きな声を出さないでください。どろぼうが、びっくりします」



 びっくりしたのは、わたしですよ、ミケさん。

 それより、ミケさん、お店に子どもたちがやってきましたよ。

 落ち着いてる場合じゃないです。

 危ないから、早く、お子さんたちをどろぼうから避難させてあげてください!



ミケ「このこたちも、どろぼうです」



 えっ?!



子ども1「お月見どろぼうでーす!」

子ども2「お月見くださあーい!」


ミケ「ほら、ね」



 あっ、なんだ。どろぼうって、のことだったんですね!

 おどかさないでくださいよ、ミケさん。あー、びっくりした。

 じゃ、さっき、ミケさんが言っていたどろぼうも、お月見どろぼうのことだったんですか?



ミケ「今日は、十五夜ですよ。当たり前じゃないですか」



 猫のお菓子屋さんから、お月見どろぼうのこどもたちが、たくさんお菓子をもらって楽しそうにて出て来ます。 

 お月見どろぼうは、お月見にまつわる昔からの風習です。子どもたちが「月からの使者」と考えられていたことから、中秋の名月のおおそなえものは、子どもたちが持って帰ってもいいとされていました。

 昔は釣り竿みたいなものを使って、子どもたちはお月見だんごを盗んでいました。今でもこの風習が残っている地域では、子どもたちは「お月見どろぼうです」「お月見ください」と言って家々を回り、お菓子をもらう日となっています。


 いわば、日本のハロウインですね。

 でも、昔からの日本の風習を、最近外国から来た行事で説明するのって、おかしいですね。

 お菓子なだけに、キャハハハッ。



コミ「=ΦwΦ==○)゜O゜) ネコハー゚ンチ!」



 イテッ!

 って、コミさん! なんで、またスタジオにいるんですか。ミケさんにレポーターを頼んだんですよ。コミさんには頼んでいません!



コミ「ニュースキャスターたるもの、くだらないダジャレを言って、はしゃぐのはやめてください。見苦しい。NNNの品位にかかわります。今日は、猫のお菓子屋さんの差し入れのお月見だんごを持ってきました。単なるお使いです。だから、お代も請求書もないので、安心して、わたしに感謝してください」



 (・_・;).。oO(あれほど、スタジオに入れるんじゃないと……)



コミ「立ち入り禁止だったのは、レポーターのミケちゃんです。警備員さんたちやスタッフの皆さんにも、お月見どろぼうのお菓子をおすそ分けしたので、喜んでスタジオに入れてくれた上に、感謝までされました。だから、あなたも、わたしに感謝しなさい」



 (・_・;).。oO(商売だけでなく、根回しまで上手いとは……。三毛猫、あなどれない)



ミケ「各地の天気が、気になるところですが、曇っていても、雨が降っても、その雲の上には、まんまる十五夜お月さま。それでは、猫のお菓子屋さんからの中継を終わります。スタジオのコミちゃん、どうぞ」


コミ「レポーターのミケちゃん、ありがとうございました。お月見どろぼうの子どもたちにも、よろしくお伝えください。そろそろ時間になりました。これで、NNNニュースを終わります。皆さま、今宵は良いお月見を!」



 わっ、わっ、わっ、わたしの仕事を取らないでくださいってば!!

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