棚ぼたおはぎ 長月

 本日のお当番は、黒猫おはぎくん。

 お菓子は、おはぎくんの名前と同じ、おはぎです。秋のお彼岸だからね。


 おはぎくんが開店の準備をしていたら、棚からボタッとぼたもちが落ちてきた!

 棚からぼたもちが落ちてきたのは、七夕たなばたの日のNNNニューススタジオに次いで二度目だ。

 


 ラッキー!



 きっと他の猫さんたちは、うらやましいはずだ。日替わりお菓子が2種類になったんだし、お味見だってできるんだし。


 でも、当のおはぎくんは困り顔だ。


 おはぎくんが用意したおはぎと棚から落ちてきたぼたもちが混ざってしまって、どれがおはぎで、どれがぼたもちなのか区別がつかない。

 お客さんに「おはぎ3個とぼたもち2個ください」と注文を受けても、とんとわからないんだもの。


 おはぎくん、焦ってGoogle先生に聞いてみた。


 こしあんがおはぎ、粒あんがぼたもちとか、小さいのがおはぎで大きいのがぼたもちとか、秋のお彼岸に食べるのがおはぎで、春のお彼岸に食べるのがぼたもちだとか……いろいろあるんだけれど、決定的な違いはなくて結論は、



 おはぎとぼたもちは、同じもの。



 食べる時期で、一応の区別をつけるらしい。


 だけど、律儀で正直者のおはぎくんは、「全部、おはぎです」とは言えない。

 だって、おはぎくんが用意したのは確かにおはぎだけれど、棚から落ちてきたのはぼたもちなんだからね。


 おはぎくんは困り果て、おはぎとぼたもちを前にして、ただただ途方にくれるばかりであった。




「たなぼたおはぎ」—— 思わぬラッキーは、得てして思わぬアンラッキーとなる。このことは猫さんたちの間で教訓として、長らく語り継がれることになった。


 似た表現に「たなばた、たなぼた」がある。

 しかし、意味は異なり、「一見しただけでは無意味、あるいは関連を見出せなくても、実は有益である」という事象を指す。しましま三毛猫のコミ氏によって、最近作られたことわざ である。

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