季節のお菓子 Ⅲ

七夕さくべい星まつり 文月 葉月

 こんばんは。NNNニュースの時間です。今日は、季節のお菓子の話題からお届けします。



 7月7日は、七夕たなばたです。

 毎年この日は、織姫さまと彦星さまが一年ぶりに会えるかどうか、お天気が気になるところですね。


 七夕は、旧暦の7月7日のお祭りです。それが新暦になって、7月7日は梅雨のさなかになってしまいました。

 この時期、下界では大雨になることも多く、おちおち織姫さまと彦星さまのデートの日を気にしてもいられません。


 2023年の旧暦7月7日は、新暦だと8月22日になります。今度は、台風が心配になってきます。

 しかし、昨今はリモートデートという方法もありますから、織姫さまと彦星さまは雨になっても、昔ほど、がっかりはしないのかもしれません。

 それに、このご時勢、晴れてデートに出掛けたとしても、施設や環境によっては、なかなか以前のようには仲良く(婉曲表現)できないかもしれません。

 一長一短。

 織姫さまと彦星さまも長い付き合いですから、いろいろあります。いろいろな変化や刺激があるからこそ、一千年以上もお付き合いを続けてこれたのでしょう。


 

 さて、本題の季節のお菓子についてです。

 七夕の行事食といえば素麺そうめんですが、その素麺のご先祖の索餅さくべいというお菓子をご存知ですか? 


 索餅は、疫病除け、無病息災のお菓子です。

 

 昔、中国では七夕の日にこのお菓子を食べ、1年間の無病息災を願うという風習がありました。7月7日に亡くなった子どもが霊鬼となって熱病を流行らせたので、その子の好きだった索餅をおそなえして、霊を鎮めたという故事に由来しています。

 この索餅が奈良時代に日本に伝わり、やがて素麺に変わっていったといわれています。



 一年間の無病息災、疫病除けということもあって、猫のお菓子屋さんでも索餅を販売することにしたそうですよ。

 きっと、お店の前には無病息災を願って索餅を買い求めるお客さんたちが、いつもにまして行列を作っていることでしょう。



 本日も、猫のお菓子屋さんに中継が出ています。

 今回のレポーターは、猫のお菓子屋さんでお当番経験のある三毛猫さんにお願いしてあります。

 ええと、お当番をしたことのある三毛猫さんといっても、なんにんもいらっしゃいますが、どなたでしたっけ…… あっ、わかりました、レポーターをお願いしたのは、しましま三毛猫のコミさんのようです。

 

 コミレポーター、行列のようすは、どうですか?

 コミさん? コミレポーターさん?


 おや、コミさんだけでなく、お菓子屋さんの前には行列どころか、お客さんがだれもいませんね。

 お店の前には笹も飾られていますし、明かりもいているのに、いったい、どうしたことでしょうか?

  


コミ「お届けものでーす」



 お届けものって、本番中にスタジオに入ってこないでください! だれか、この配達員をつまみ出して—— って、コミさんじゃないですか!

 今日は、猫のお菓子屋さんでレポーターの仕事を頼んだはずですよ。なんで、スタジオにいるんですか? あっ、わかった! 配達の仕事とダブルブッキングしたんですね?! 困りますねぇ、スケジュール管理は責任を持って、キッチリとしないと。みんなの迷惑になりますよ。



コミ「ちがいます。猫のお菓子屋さんは、お店の混雑緩和のため、通販を始めたんです。その連絡はあったはずです。それなのに、お店にノコノコ中継車を出す方が間違っています。野次馬が集まって、騒音問題が発生しちゃうじゃないですか。近所迷惑です。無責任で迷惑なのはそっちです。ほんと、これだからなぁ」



 ……。



コミ「ということで、話題の索餅をお届けにあがりました」



 それは、それは。ごくろうさまです。



コミ「代引ですので、お代を払ってください」



 えっ?



コミ「だから、代引です」



 ボタッ!


 あれっ? なにか、棚から、落ちてきましたよ。

 コミさん、確かめてきますから、ちょっと待っていてください。


 どうやら、猫のお菓子屋さんの包みのようです。

 中を確認してみましょう。


 ぼたもち??? なんで、ぼたもち???



コミ「早く、お代を払ってください。ニュース、終わっちゃいますよ」



 ああ、はいはい。



コミ「『はい』は、一回」



 (・_・;).。oO(…… コミさんは、猫のお菓子屋さん界隈では、ツッコミ上等のコミといわれているらしいが)



コミ「請求書です」



 え? えぇぇ???

 索餅って、こんなに高価なお菓子なんですか???

 小麦粉と米粉で作ったお菓子なのに?

 いつから、猫のお菓子屋さんは、ぼったくりになったんですか?!



コミ「ひと聞きの悪いことを言わないでください。ぼったくりじゃなくて、ぼたもちです。お代には、索餅とぼたもちの両方の料金が含まれています」



 ぼたもちの料金って? 

 あのね、コミさん、索餅は、わかりますよ。七夕ですからね。

 しかし、七夕に、ぼたもちというのは……ぼたもちは、春のお彼岸……。



コミ「たなばた。たなぼた」



 はい?



コミ「だから、たなばた、たなぼた」



 たなばた、たなぼたって……。

 ダジャレですか?  (・_・;).。oO(くだらない)



コミ「くだらなくはありません。小豆あずきは、邪気を払う食べ物です。たなぼたは『思いがけない幸運が舞い込む』ことですよ。たなばたに、たなぼたのぼたもちと索餅の組み合わせなんて、最強の疫病除け、無病息災じゃないですか。さっさと代金を払ってください!」



 (・_・;).。oO(聞きしに勝る三毛猫の商売上手……)




コミ「商売上手の三毛猫は、厄除け疫病除け上手でもあるのです。時間になりました。これで、NNNニュースを終わります」



 わたしの仕事を取らないでください、コミさん!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る