タヌタヌシャムシャムかくれんぼのコーヒーゼリー

 本日のお当番は、シャムミックスのリイムくんです。

 リイムくんは、シャムミックスの中でもタヌシャムと呼ばれる福々ころころした男の子。

 お顔の色が濃くていわゆるタヌキ顔ですが、お菓子が後から木の葉になったりはしないので、ご安心を。(まあね、お菓子の中でかくれんぼはしていますけどね)


 日替わりお菓子は、タヌタヌシャムシャムかくれんぼのコーヒーゼリー。



客O「もう、そろそろ、わかってきた。コーヒーゼリーってカタカナだし、いかにも外国のデザートっぽいけど、【日本のおやつ】の見出しの中にあるってことは、日本生まれのお菓子なんだ」

客P「でも、ショーケースにはミルクプリンが二つしか残っていないよ。かんじんのコーヒーゼリーが一つもない。わたし、三つ、買いたいんだけど」



 ご明察!

 さすが猫のお菓子屋さんのご常連。コーヒーゼリーは日本で生まれたお菓子です。

 それと、そちらのお客さん、心配はご無用です。今、リイムくんが、奥から追加のコーヒーゼリーを運んできますからね。


 

客O「それじゃ、コーヒーゼリー、三つね」

客P「わたしも、三つ、お願いします」



 でも、リイムくんが運んできたのは、ミルクプリン。

 コーヒーの色をしたゼリーは一つもない。なのに、リイムくんはいそいそとミルクプリンを三つずつ、テイクアウト用の箱に入れ始める。

 それを見て、あわてたのはお客さんたち。



客P「ちょっと、待って。注文したのはコーヒーゼリーよ。ミルクプリンじゃなくて」



 お客さん、落ち着いて。

 これが本日の猫のお菓子屋さんの日替わりのコーヒーゼリーです。そうだよね、リイムくん。

 ほら、リイムくんも、うなずいている。



客O「うそ。コーヒーの色してないし。どう見ても、白いよ」

客P「そうだよ。これは、まちがいなくコーヒーゼリーじゃなくて、ミルクプリン! りいむくんがいくらタヌシャムって言ったて、タヌキに化かされたりはしないから」



 いえいえ、これはまごうかたなきコーヒーゼリー。猫のお菓子屋さんの本日のお菓子です。

 一見ミルクプリンに見えるのは、シャム系の赤ちゃん猫からきているのです。

 サイアミーズの血筋を受け継ぐ猫さんたちは、生まれたときは真っ白です。それが成長するにつれ、だんだん色が出てきて、シャムやブチやハチワレのそれぞれの柄になっていくんですよ。



客O「サイアミーズって、シャム猫のことだよね。そう言われれば、シャムの赤ちゃん猫は白いって聞いたことある」

客P「それじゃぁ、このミルクプリンは、明日か明後日あさってになればコーヒーゼリーになるっていうの? 賞味期限はだいじょうぶなの?」



 コーヒーゼリーが、ミルクプリンになるわけはありません。ミルクプリンは、ミルクプリン。コーヒーゼリーは、コーヒーゼリー。いつまで待っても、ミルクプリンはコーヒーゼリーにはなりません。

 賞味期限は明日まで。なるべく早くお召し上がりください。



客O「だったら、コーヒーゼリーをちょうだい。ミルクプリンじゃなくて」



 お客さんは、ミルクプリン、おきらいですか。



客P「ミルクプリンは好きだけど、日替わりお菓子のコーヒーゼリーが買いたいの! コーヒーゼリーの気分なの!」



 キレ気味のお客さんに、リイムくんがたずねる。

リイム「コーヒーゼリーとミルクプリンがいっしょになったお菓子なら、気分に合いませんか」



客O「あら、リイムくん。それなら、いいけれど。でも、ここにあるのはミルクプリンだけじゃないの?」


リイム「だから、かくれんぼなんです。百聞は一見にしかず。ご試食、どうぞ」


客P「あっ、ほんとだ! コヒーゼリーだ! 美味しい!!」

客O「なになに、ほんとに? わたしも試食!」


リイム「はい、どうぞ」


客O「ほんとだ! ミルクプリンの中にコーヒーゼリーが、かくれていた!」


リイム「ミルクプリン中にコーヒーゼリーがかくれんぼ。だから、ぼくの日替わりお菓子は『タヌタヌシャムシャムかくれんぼのコーヒーゼリー』というのです」


客P「ひとつでコーヒーゼリーとミルクプリンが食べられるなんて、最高! さすが、リイムくん!」



 お客さんたち、さっきまで、ミルクプリンをいやがっていたんじゃないですか。



客O「いやがってなんか、いないよ。知らなかっただけよ」

客P「そうよ。シャム系の赤ちゃん猫を見せられても、なにも知らなきゃ『この子は白猫でシャム猫じゃない、だまされないぞ』って思うじゃないの」



 ごもっともといえば、ごもっとも。

 今では、立派なタヌシャムのリイムくんだって、生まれたときは真っ白可憐な赤ちゃん猫だったんです。それが、だんだん色が濃くなり、体がずんずん丸くなり、スリムで優雅なサイアミーズのスタイルはどこへやら、今ではポンポコタヌキそのもの。シャムミックスではなく、ほんとうはタヌキとのミックスとの噂もチラホラ—— イテッ! 



客O「引っ掻かれて、当然よ。リイムくん、コーヒーゼリー、三つじゃなくて、五つにしてちょうだい」

客P「わたしは、六つにする」



 招き猫とおんなじで、タヌキも招福、開運、商売繁盛の縁起物。

 福々ころころリイムくんの『タヌタヌシャムシャムかくれんぼのコーヒーゼリー』。

 猫とタヌキで、ダブルの福がやってくるかも。

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