第90話 月のしずく
東の空には潤んだ月
頬を撫でる風は
ほんの少し鋭さを増して
通りすぎる季節に
そっと耳をふさいだ
閉ざされてゆく音
静けさだけが満ちてゆく
ゆるりと流れる雲が
まるでベールのように
月を覆い隠してゆき
最期の力を振り絞るみたいに
金色の光を落とした
差し出した両手に
拾い集めるその雫
淡い光を放ちながら
消えゆく姿を目で追って
見下ろす足下に伸びる影
季節の先を確かめながら
もう一度歩き出す
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