第18話・旅立ち
不死者の大軍との戦いは、民間人への被害は少なかったものの騎士団に大きな被害をもたらした。
エヴァンス伯爵の騎士団、その半数が死に絶え、生き残った騎士たちは平原で遺品を集めている。
この被害をもたらしたのは、僕が出会った一人の人物によるものだ。その人物は僕のことを神の子と呼んだ。
神の子、それが何を意味するのか、それは僕にはわからない。ただ、そう呼ばれるものはたった一人で軍を凌ぐ戦闘能力を持つということだ。
ジハードの効果が切れた僕ですらステータスはこうだ。
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レベル25
HP16777216/16777216
MP16777216/16777216
筋力16777216
魔力16777216
素早さ16777216
器用さ16777216
スキル:天賦の才(大鎌)・天賦の才(創造魔法)
称号:絶望喰らい
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これは軍を凌ぐ力だ。幾千、幾万の軍勢が、僕を殺しに来たところで、それを達成することは不可能だろう。
それでも尚僕は、僕を神の子と呼んだあの人物に手も足も出なかった。
それと、僕はSランク冒険者になった。これは、冒険者ギルドの歴史の中で最速の記録だったそうだ。それゆえに、僕のティアはSランク冒険者にしては圧倒的に低かった。
だがSランク冒険者はその希少さ故に、ティアなど関係なく依頼を受けることができるのである。
「Sランクおめでとうございます、でも国王領に行ってしまうのは寂しいです」
僕が冒険者ギルドでのレベルアップ処理を終えると、ソフィアさんがしみじみと言った。
Sランク冒険者は危機に対処するために国王直轄領で活躍することが冒険者ギルドによって定められている。国王直轄領は、下位の貴族の領地の中心に位置する。よって、下位貴族の領地への移動が最もしやすいのだ。
また、国王直轄領は物流の中心でもある。当然、情報網も国王直轄領を中心に構築されるのである。
「やめろ……ソフィア……こいつはもっと広い世界を見るべきなんだよおおおおおおおぉぉぉおんおん!」
と言いながらもオリバーさんは一番泣いていた。最後など、声を上げて泣き崩れていた。
「あぁ……見送るのが俺たちの勤めだ……俺たちが育てたSランク……本当に誇らしい……」
オスカー様も声は上げないものの泣いている。
「泣かないでください、僕は絶対にみなさんに会いに来ます。大体、僕はまだ恩返ししきれていないんですよ」
僕はそのくらい龍の霹靂に恩を感じていた。なにせ、彼らは僕を地獄の底から連れ出してくれた。僕が王都に行くのを恐れなくて済む理由はそこにあった。
「サイス君。何を言っているんです? あなたは私たちの命の恩人です」
だが龍の霹靂にとっては、自分たちこそ僕に恩を感じていた。世界ごと滅びてしまうような危機を、世界ごと自分たちを救ってくれた大恩人こそ僕だった。
「それができたのは、オスカーさんが僕を見つけてくれたからです。その恩は僕の命よりも重いんですよ」
お互いに、自分たちこそ恩があると言って譲らなかった。
「何を言ってるんだ、あれは助けて当然だった」
お互いに、自分の行動は必然だったと言って譲らなかった。
「あはは、ともあれいつかまた会いましょう。いつまででも、僕は龍の落し子です!」
だから僕は笑ってしまった。
だけどそれでよかった。Sランクの旅路が涙で始まるだなんて僕はゴメンだったからだ。
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